地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

太陽の恵みを全身で感じる、そんな家に住みたい

朝起きるのが辛くなっていませんか? ぬくぬくと布団に包まっていると、そこから脱出するのに勇気が要ります。特に家の中が寒いと、つい、ダラダラ。

 

先週の日曜日、いつもより少しだけ、朝寝坊してから愛犬と散歩に出かけました。時刻は午前8時、外気は氷点下約5℃。でも、太陽が東からゆっくり昇り、天気がよくなりそう。そんなことを思いながら近所の家の壁を眺めると、表面に白いモノが。

 

これは壁体の温度差によってできた結露。外気温が低かったので、それが霜になって凍り付いた状態でした。構造躯体が薄っすらと浮き出るため、「レントゲン現象」などと呼ばれています。気になったので、そのサイディング壁に赤外線放射温度計を当てると-13.3℃。

 

今度は杉の無垢板壁で試すことにしました。太陽の光が当たる南面と当たっていない西面で調査。西南の角で温度計を光と影に当てると、南面13.1℃、西面-11.8℃、で約25℃の温度差。わずか10数度、温度計を水平に動かしただけなのにこの違い。

 

寒冷地・信州では、冬の寒さは厳しく辛い。部屋全体を暖房するにはかなりのエネルギーを消費します。熱損失という点では、開口部(=窓)部分に熱ロスが多く北海道では窓を小さくする傾向があります。

 

でも、この太陽の熱を利用しない手はありません。建物の断熱気密性能を良くしてできるだけ空調設備を使わないようにする。南面に大きな開口を取り、昼間の太陽の熱を取り込む。高断熱型LOW-E硝子を使えば、日差しを取り込みながら室内の熱を逃がさないようにできます。

 

さらに床に熱容量の高い土間を造り夜放熱させる。これは最近よく耳にするパッシブハウスの考え方ですが、私たちが求める地球に優しいエコハウスのひとつの答えでもあります。

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↑築約20年の木造2階建て。光が当たっている部分が南面

 

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↑南面に温度計を照射すると13.1℃

 

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↑西面に温度計を照射するとー11.8℃

  この温度差、衝撃でした

 

 

 

美しき安曇野の残像

最近、米国出身のアレックス・カーさんが出演するTV番組を見ました。彼は東洋文化研究家であり著述家。留学中に日本中を旅し、徳山県祖谷の自然に感銘を受け、300年前の古民家を購入して、少しずつ修復しながら住居にしました。現在は篪庵(ちいいおり)として見学や宿泊ができます。

 

カーさんの著書「美しき日本の残像」(1993年、新潮社)では、古き良き時代の日本の原風景が失われていく様子を嘆いています。鉄塔と電柱やコンクリートの護岸が美観を壊し、街にはパチンコ店、アルミサッシの窓で造られた住宅、何処へ行っても代わり映えがしない風景。同じ街に見えてしまう。

 

さらに昨年出版された「ニッポン景観論」(集英社新書ビジュアル版)では、派手な看板や田んぼのなかで目立つブルーシートにも、景観への配慮を訴えています。この本を読んだ後、北アルプスを望みながら車を走らすと、意味のない看板や何処までも続く電信柱などが次から次へと現われ、あまりにも多すぎて具合が悪くなってきました。

 

安曇野を訪ねた30数年前の初夏、夕食後にペンションの主人から「これからホタルを見に行きましょう」と誘われました。何処まで行くのかという疑問を感じながら、ワンボックスカーに乗り込むと、到着したのは近くの田んぼ。そこに、ハザードランプをチカチカ点滅させると……。

 

車のまわりに小さな光の粒が集まってきて、その数がみるみる増え、満天の星空を漂いながら宙を舞う。こんな世界は初めてでした。いま思うと東京から安曇野に移住しようと決めたのは、この時だったかもしれません。

 

安曇野の田園風景は今でも有名ですが、ホタルはいません。田んぼも家が建ち、虫食い状態。建物にも統一感がなくきれいな街並とはいえません。少しでも自然にとけ込む街並みを創りたい。そんなことを考えながら、家造りに日々精進しています。

 

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↑今日の安曇野の風景。正面は有明

自邸で実験住宅を5回建てた建築家の話

住宅は3回建てないと納得する家にならないといいますが、自邸を5回建てた建築家がいます。彼の名前は藤井厚二(1888年-1938年)。竹中工務店で初の帝大卒・建築家として7年間勤め、退職後は自邸を実験住宅として建てながら、その研究成果を「日本の住宅」(1929年)という本にまとめました。

 

5回も自邸を建てるなんて羨ましい限りですが、研究対象としてデータを取ながら試みるということは、エネルギーが相当いることです。5回目の建物は、京都の大山崎町に昭和3年(1928年)に建てられ、聴竹居(ちょうちくきょ)として今も現存しています。エコハウス研究会で見学させていただきました。

 

建物は天王山の麓、木立に覆われた高台にあります。その特徴は、1.科学的アプローチを駆使したパッシブな(自然エネルギーを生かした)建築計画、2.洋風と和風そしてモダンを統合したデザイン、3.住まいの“原型”としての居間中心のプラニング、4.ライフスタイル全体をデザイン(以上、パンフレットからの抜粋)。

 

地下5mにある地熱を利用したエアーチュ-ブ、天井や内部建具で風の通りを工夫した換気システム、建材のほとんどを自然素材で施工……。日本の住宅で近年になって求められている環境共生住宅が、この当時に考えられすでに実践されていたことに驚かされます。また給湯機や暖房機の熱源はすべて電気を使用。オール電化住宅だったことも興味深いです。

 

藤井は49歳で逝去し、建築環境工学の研究が一時途絶えしまったそうです。彼の研究がもっと早く引き継がれていれば、シックハウスも防げていたかもしれません。

 

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↑緑に包まれたアプローチ。建物内部の撮影及びネット掲載は許可が必要

 

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↑聴竹居のパンフレット。見学するには要予約

 

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↑今年の春に出版された、聴竹居: 藤井厚二の木

造モダズム建築(コロナ・ブックス)は、見学

前に必見

 

 

 

狭さを感じさせない千利休の茶室

私が所属しているエコハウス研究会とは、古民家から先人の知恵を学び、それを現代の最新技術と融合させながら家造りを考えていこうという団体です。住宅の歴史を学んだり、科学的な資料に基づいてデータを読み込んだり、参加しているとつくづく建築って奥が深いなと思います。時々話題の建物なども訪ねたりします。

 

京都で開催された建築見学ツアーでは、妙喜庵待庵と聴竹居という名建築を見てきました。待庵は茶人・千利休が造ったといわれる現存する最古の茶室で、数奇屋建築の原型にもなったとされています。わずか二畳の茶席というミニマムスペースで、空間として成り立つのか疑問でしたが、狭い感じがしなく、どこか落ち着きます。

 

二畳といっても正面に床の間があり、次の間を加えると四畳半ほどあります。屋根の形に合わせた勾配天井になっているのこと、京間は畳のサイズが関東間より大きいなどが、ほどよい空間と感じる要因かもしれません。屋根は切妻造杮葺きで、軒樋は竹の半丸材。国宝なので建物を維持するにも指定された高価な材料を使うので、メンテナンスも大変だそうです。

 

利休が考案したとされるにじり口ですが、ここから入るものは「武士も商人も誰もが身分差がなく、同じように頭を下げて入り茶室の中では皆平等に振舞われる」ということを表したといわれます。利休は現存している甲冑から身長が180cmと当時としては大柄だといわれていますので、この出入りには利休自身が苦労したのではと思ってしまいます。

 

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↑残念ながら建物の撮影は禁止だったので絵葉書を購入しました

思い立ったら日光へ弾丸トラベリング

仕事で日常のルーティーンが続くと、心のビタミン欠乏症になることがあります。頭の中がモヤモヤして新鮮味が感じられません。そんな時、私にとってカンフル剤になるのが建築見学。気分転換になり、リフレッシュできます。

 

初秋に日光のイタリア大使館別荘を訪ねてみました。この別荘を知ったのは妻が録画してくれたTV番組。チェコ出身の建築家アントニン・レーモンドの設計によるものだとわかって、ぜひ行きたいと思っていました。

 

日光いろは坂を上りきると中禅寺湖。別荘はその湖畔にあります。歌ケ浜駐車所に車を止めて歩いて15分。紅葉がはじまる森の中の道はちょうどいい散歩コースです。昭和3年に建造された別荘は、平成9年までイタリア大使館の別荘として利用され、その後、当時の図面を元に復元されました。

 

建物は中禅寺湖畔にあり、湖を独り占めできる雰囲気。1階は広々としたリビング、キッチン、書斎、2階は寝室が4部屋。建物の造りは簡素ですが、内外装に杉皮を所々に使い、その地域の特産を使うというレーモンドらしさがうかがわれます。

 

私と妻がいちばんに楽しみにしていたのは、眼下に見る中禅寺湖のダイナミックな景観。「あのヒロブチいいよね」。先にTV番組を見ていた妻の話に、一瞬「……?」になってしまいましたが、それは、リビングにつながる広縁(ひろえん)のことで、そこからの眺めは、一日中眺めていても飽きることがなく、移り行く自然の変化を感じられます。

 

今は紅葉のシーズンも終わり、長い冬がはじまります。「来年の春は戦場ヶ原を歩いてみようよ」。その時にもう一度訪ねてみたい別荘でした。

 

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↑ダイニングから広縁を見る

 

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↑一日いても飽きない広縁での眺めは最高

 

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↑森の中に溶け込むイタリア大使館別荘。周囲と完全に同化しています

 

 

 

 

 

お気に入りのウッドデッキでブレイクタイム

このところ増えているのがウッドデッキ工事。住宅ばかりか別荘や店舗など、様々なところから受注がきます。ウッドデッキといっても、材料はいろいろあります。

 

とにかく安くというとSPF材。女性の方は日焼け止め防止をイメージしてしまうかもしれませんが、建築では木造枠組み工法2×4(ツー・バイ・フォー)で使う材料。SはSpruce(スプルース→トウヒ)、PはPine(パイン→松)、FはFir(ファー→モミ)のことで、その頭文字をとっています。

 

ホームセンターでも簡単に手に入れることができ、加工がしやすいのですが、耐久性という点ではオススメできません。湿気の多い日本の気候では腐食しやすく塗装しても10年くらいが寿命です。

 

サッシメーカーなどでは、無垢材の腐りやすいという弱点をカバーするために新素材を開発しています。たとえばYKKのリウッドデッキシリーズ。木粉とポリプロピレンを配合したこの素材は、質感は木の風合いを残したまま、腐りにくい、水はけがいい、ささくれがないなど、工業製品のように安定しています。腐ることを気にする向きには適材です。

 

ウッドデッキのほか、最近バルコニーの床などにも使われているのがFRPの格子パネル。グレイチングのような形状のため、光を取り入れるのにも便利で、設計事務所などの凝った建物で採用されています。素足で歩くには少し抵抗がありますが、最近ではポリカーボネイトのシートを敷き補強しているものもあります。

 

でもやっぱり木のほうがいいという方には、WRC(ウェスタン・レッド・シダー→米杉)がイチ押し。弊社では最も人気の素材です。その訳は比較的安価で、腐りにくく、しかも防虫効果があり、耐久性の面でも優れているからです。もちろん長持ちさせるには、固定ビスに錆びないステンレスを使い、こまめな塗装するなどのメンテナンスが必要になります。

 

もうひとつ無垢材といえば、ハードウッド。これは密度の高い熱帯広葉樹で、イペ、ウリン、イタウバなどがあります。公共工事などに多く使われ、メンテナンスフリーといわれるくらい耐久性抜群。水辺のボートウォークなどにも使われます。価格面では高いのですが、長く使うことを考えればお得かもしれません。

 

ウッドデッキは素材の選び方で印象が変わります。外観のイメージや、ライフスタイルを考えながら、お気に入りの素材をチョイスしましょう。

 

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↑リウッドデッキ                                                                                                                                          

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↑ウリンのデッキ材。上はFRP格子パネル

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↑WRCで施工。日本では米杉とよばれていますが、実はヒノキ科の樹木

マイナンバー制度のミニセミナー

ホームページのデザインを変更しました。理由はスマートフォン対応の画面に答えるためです。スマホだと画面の文字が小さく、指を広げて拡大しなければなりませんでしたが、それがなくなりました。ということで、パソコンだけではなく、スマホでもぜひご覧ください。

 

昨日「マイナンバー制度について」、民間事業者のセミナーを受けてきました。この先私たちにどのように関わってくるのか、あまり知られてないような気がします。この制度は、10月1日以降に個人番号の通知と法人番号の通知・公表が行われ、同時に12月までに「個人番号カード交付申請書」が、全国民に郵送されます。

 

年金や雇用保険の資格取得や給付・医療保険の給付などの社会保障、税務当局に提出する書類に記載する税について、災害対策について、この3要件の行政手続きでマイナンバーが必要になります。番号の利用開始は来年1月からスタート(社会保険は平成29年1月から)。政府は「公平・公正な社会の実現」と謳っていますが、税金の取りっぱぐれがないようにするということが、目的にあると思います。

 

この制度には、個人情報の漏洩、番号のなりすまし、国家による一元管理など、懸念材料も指摘されています。個人情報に関わることについては罰則が強化され、最も厳しいものでは「4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科」というのがあります。

 

事業者としては、個人情報に対して適切な安全管理措置のために組織としての対応が求められます。簡単に言えば社内で情報を悪用されないように、いろいろな方法で管理しましょうということです。そのために組織をつくり、事務取り扱い担当者を監督・教育したり、電子媒体の漏洩を防止したりと、負担が大きくなります。

 

いままでの書類の書式も変更になり、そのための費用がかかり、委託先でも安全管理が強化されて、システムも再構築しなければなりません。税金を使って国家規模ですすめていくのですから、今後どのような使われ方をされていくのか、私たち自身も見守っていかなければならないですね。

 

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What is this object?

 2015-09-21のphoto

  :ニューヨーク・グッゲンハイム美術館の天井