地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

自邸で実験住宅を5回建てた建築家の話

住宅は3回建てないと納得する家にならないといいますが、自邸を5回建てた建築家がいます。彼の名前は藤井厚二(1888年-1938年)。竹中工務店で初の帝大卒・建築家として7年間勤め、退職後は自邸を実験住宅として建てながら、その研究成果を「日本の住宅」(1929年)という本にまとめました。

 

5回も自邸を建てるなんて羨ましい限りですが、研究対象としてデータを取ながら試みるということは、エネルギーが相当いることです。5回目の建物は、京都の大山崎町に昭和3年(1928年)に建てられ、聴竹居(ちょうちくきょ)として今も現存しています。エコハウス研究会で見学させていただきました。

 

建物は天王山の麓、木立に覆われた高台にあります。その特徴は、1.科学的アプローチを駆使したパッシブな(自然エネルギーを生かした)建築計画、2.洋風と和風そしてモダンを統合したデザイン、3.住まいの“原型”としての居間中心のプラニング、4.ライフスタイル全体をデザイン(以上、パンフレットからの抜粋)。

 

地下5mにある地熱を利用したエアーチュ-ブ、天井や内部建具で風の通りを工夫した換気システム、建材のほとんどを自然素材で施工……。日本の住宅で近年になって求められている環境共生住宅が、この当時に考えられすでに実践されていたことに驚かされます。また給湯機や暖房機の熱源はすべて電気を使用。オール電化住宅だったことも興味深いです。

 

藤井は49歳で逝去し、建築環境工学の研究が一時途絶えしまったそうです。彼の研究がもっと早く引き継がれていれば、シックハウスも防げていたかもしれません。

 

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↑緑に包まれたアプローチ。建物内部の撮影及びネット掲載は許可が必要

 

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↑聴竹居のパンフレット。見学するには要予約

 

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↑今年の春に出版された、聴竹居: 藤井厚二の木

造モダズム建築(コロナ・ブックス)は、見学

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