思い立ったら日光へ弾丸トラベリング
仕事で日常のルーティーンが続くと、心のビタミン欠乏症になることがあります。頭の中がモヤモヤして新鮮味が感じられません。そんな時、私にとってカンフル剤になるのが建築見学。気分転換になり、リフレッシュできます。
初秋に日光のイタリア大使館別荘を訪ねてみました。この別荘を知ったのは妻が録画してくれたTV番組。チェコ出身の建築家アントニン・レーモンドの設計によるものだとわかって、ぜひ行きたいと思っていました。
日光いろは坂を上りきると中禅寺湖。別荘はその湖畔にあります。歌ケ浜駐車所に車を止めて歩いて15分。紅葉がはじまる森の中の道はちょうどいい散歩コースです。昭和3年に建造された別荘は、平成9年までイタリア大使館の別荘として利用され、その後、当時の図面を元に復元されました。
建物は中禅寺湖畔にあり、湖を独り占めできる雰囲気。1階は広々としたリビング、キッチン、書斎、2階は寝室が4部屋。建物の造りは簡素ですが、内外装に杉皮を所々に使い、その地域の特産を使うというレーモンドらしさがうかがわれます。
私と妻がいちばんに楽しみにしていたのは、眼下に見る中禅寺湖のダイナミックな景観。「あのヒロブチいいよね」。先にTV番組を見ていた妻の話に、一瞬「……?」になってしまいましたが、それは、リビングにつながる広縁(ひろえん)のことで、そこからの眺めは、一日中眺めていても飽きることがなく、移り行く自然の変化を感じられます。
今は紅葉のシーズンも終わり、長い冬がはじまります。「来年の春は戦場ヶ原を歩いてみようよ」。その時にもう一度訪ねてみたい別荘でした。
↑ダイニングから広縁を見る
↑一日いても飽きない広縁での眺めは最高
↑森の中に溶け込むイタリア大使館別荘。周囲と完全に同化しています
お気に入りのウッドデッキでブレイクタイム
このところ増えているのがウッドデッキ工事。住宅ばかりか別荘や店舗など、様々なところから受注がきます。ウッドデッキといっても、材料はいろいろあります。
とにかく安くというとSPF材。女性の方は日焼け止め防止をイメージしてしまうかもしれませんが、建築では木造枠組み工法2×4(ツー・バイ・フォー)で使う材料。SはSpruce(スプルース→トウヒ)、PはPine(パイン→松)、FはFir(ファー→モミ)のことで、その頭文字をとっています。
ホームセンターでも簡単に手に入れることができ、加工がしやすいのですが、耐久性という点ではオススメできません。湿気の多い日本の気候では腐食しやすく塗装しても10年くらいが寿命です。
サッシメーカーなどでは、無垢材の腐りやすいという弱点をカバーするために新素材を開発しています。たとえばYKKのリウッドデッキシリーズ。木粉とポリプロピレンを配合したこの素材は、質感は木の風合いを残したまま、腐りにくい、水はけがいい、ささくれがないなど、工業製品のように安定しています。腐ることを気にする向きには適材です。
ウッドデッキのほか、最近バルコニーの床などにも使われているのがFRPの格子パネル。グレイチングのような形状のため、光を取り入れるのにも便利で、設計事務所などの凝った建物で採用されています。素足で歩くには少し抵抗がありますが、最近ではポリカーボネイトのシートを敷き補強しているものもあります。
でもやっぱり木のほうがいいという方には、WRC(ウェスタン・レッド・シダー→米杉)がイチ押し。弊社では最も人気の素材です。その訳は比較的安価で、腐りにくく、しかも防虫効果があり、耐久性の面でも優れているからです。もちろん長持ちさせるには、固定ビスに錆びないステンレスを使い、こまめな塗装するなどのメンテナンスが必要になります。
もうひとつ無垢材といえば、ハードウッド。これは密度の高い熱帯広葉樹で、イペ、ウリン、イタウバなどがあります。公共工事などに多く使われ、メンテナンスフリーといわれるくらい耐久性抜群。水辺のボートウォークなどにも使われます。価格面では高いのですが、長く使うことを考えればお得かもしれません。
ウッドデッキは素材の選び方で印象が変わります。外観のイメージや、ライフスタイルを考えながら、お気に入りの素材をチョイスしましょう。
↑リウッドデッキ
↑ウリンのデッキ材。上はFRP格子パネル
↑WRCで施工。日本では米杉とよばれていますが、実はヒノキ科の樹木
マイナンバー制度のミニセミナー
ホームページのデザインを変更しました。理由はスマートフォン対応の画面に答えるためです。スマホだと画面の文字が小さく、指を広げて拡大しなければなりませんでしたが、それがなくなりました。ということで、パソコンだけではなく、スマホでもぜひご覧ください。
昨日「マイナンバー制度について」、民間事業者のセミナーを受けてきました。この先私たちにどのように関わってくるのか、あまり知られてないような気がします。この制度は、10月1日以降に個人番号の通知と法人番号の通知・公表が行われ、同時に12月までに「個人番号カード交付申請書」が、全国民に郵送されます。
年金や雇用保険の資格取得や給付・医療保険の給付などの社会保障、税務当局に提出する書類に記載する税について、災害対策について、この3要件の行政手続きでマイナンバーが必要になります。番号の利用開始は来年1月からスタート(社会保険は平成29年1月から)。政府は「公平・公正な社会の実現」と謳っていますが、税金の取りっぱぐれがないようにするということが、目的にあると思います。
この制度には、個人情報の漏洩、番号のなりすまし、国家による一元管理など、懸念材料も指摘されています。個人情報に関わることについては罰則が強化され、最も厳しいものでは「4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科」というのがあります。
事業者としては、個人情報に対して適切な安全管理措置のために組織としての対応が求められます。簡単に言えば社内で情報を悪用されないように、いろいろな方法で管理しましょうということです。そのために組織をつくり、事務取り扱い担当者を監督・教育したり、電子媒体の漏洩を防止したりと、負担が大きくなります。
いままでの書類の書式も変更になり、そのための費用がかかり、委託先でも安全管理が強化されて、システムも再構築しなければなりません。税金を使って国家規模ですすめていくのですから、今後どのような使われ方をされていくのか、私たち自身も見守っていかなければならないですね。
↑What is this object?
2015-09-21のphoto
:ニューヨーク・グッゲンハイム美術館の天井
350万円の値引きとローコスト住宅のナカミ
25年間ほど前から住宅の見積りに携わっています。多いときには年間200件以上を作成していたこともありました。見積作成はまず実行予算書(予定原価)を出し、そこに利益をのせます。利益率は建設会社によって異なります。ハウスメーカーでは、一般に30~40%くらいと言われています。
例えば実行予算金額が1560万円とすると、35%の利益を上げるには見積金額が2400万円、840万円の利益になります。弊社で契約していただいたお客様で、某ハウスメーカーと競合したことがあります。その時の見積金額は、弊社よりも500万円くらい高い金額でした。
しかしその月は売上が少なくどうしても契約が欲しかったようで、いきなり350万円値引きしてきました。それにはお客様も驚き、「最初の見積金額は何だったのか?」と、疑問を持たれたようです。
大きな会社には、安心感があります。テレビCMや新聞・雑誌などで、住まい手のライフスタイルや未来を語り、共感を誘います。展示場や立派なパンフレットがあり、建物の内容がよくわかります。イメージアップのためにスポーツ競技のスポンサーになったりしています。
これだけのことをするのですから、坪単価も当然高くなり利益も多く必要です。350万円値引いてもまだ余裕あるということです。
一方、ローコスト住宅といわれる建物は、利益を取るのがかなり厳しいのが現状です。物価高で建設コストが上がり、35坪前後の建物で、本体工事、給排水設備や暖房工事、照明器具などの付帯工事、建築確認申請に関わる設計料など全部含めて、1500万円くらいが相場です。
経営的にいえば、最低でも300万円の利益は欲しいところ。逆算すると、すべてを1200万円で造らなければなりません。それでも20%の利益率。ローコスト住宅をやる工務店は、必然的に契約件数を増やして、数で勝負することになります。350万円の値引きはあり得ないのです。
見た目は物件が多く景気が良さそうに見えますが、実際には経営が芳しくないという工務店も結構あります。できるだけ時間をかけずに契約して、短期間で建築する。ある会社では、営業の段階で3回アプローチをかけても契約できなければ、追いかけるのをやめるそうです。
また建築の勉強をしてない営業マンが図面を提案し、工期短縮のために協力業者に施工部隊をつくらせ管理もさせて、一気に仕上げようとするところもあります。社員には技術向上のスキルを求めず、なんでもお任せ状態。安さをのみを追求するならそれでも良いのですが、時間をかけてジックリ家造りを楽しみたい人には不向きだと思います。
弊社はハウスメーカーにはなれませんが、ローコスト住宅を目指すこともありません。適正な価格で、モノづくりにこだわる町工場のように手造り感覚を大切にしたいと考えています。
↑Where is this?
2015-09-05のphoto
:ニューヨーク・ロックフェラーセンター展望台からのエンパイヤー・ステート・ビルディング
ひとりの建築家の人生から夢を感じた
図書館で新刊コーナーを覗いていると、黄色い背景に黒いスーツを着た若い男性の背表紙を見つけました。よく見ると若き日の建築家・黒川紀章。題名は「メディア・モンスター 誰が黒川紀章を殺したのか?」。少し過激なタイトルだなと思いながら、本のページをめくっているうちに、その世界に入り込んでしまいました。
黒川紀章は、1960年代に建築運動メタボリズム(新陳代謝)の旗手として華やかにデビューした建築家。大学院生の時から設計事務所を立ち上げ、新聞・雑誌・テレビなどに、建築や都市論を語り、政財界や文化人などの著名人と交友関係が多く、マスコミに最も露出している建築家でした。
そんな彼が、2007年4月に突然、東京都知事選に出馬表明します。何故? ずっと疑問に感じていたのですが、読み進めるうちにひとつの答えを見つけました。この本は黒川紀章の人生を語るノンフィクションですが、戦後の建築や都市のあり方の変化を知ることができ、また現代が抱える多くの問題は過去の歴史を引きずっていることを痛感させられます。
私にとっての黒川紀章は、好きな建築家というよりは気になる建築家でした。彼の代表作・中銀カプセルタワービルは、中学生の時に、竣工記事を新聞で読みました。首都高を車で走るようになってからは、そのフォルムから未来都市を感じ、いつかは近くで見たいと思っていました。
ここ数年でその機会に恵まれました。埼玉県立近代美術館には、カプセルの一室が寄贈されているというので、そちらにも行ってきました。外から覗くだけでしたが、リニュアルされて当時の雰囲気を再現しています。
建物は老朽化し超高層ビルが林立する中に立つと、その姿は満身創痍で痛々しい。古くなった部屋(カプセル)を個々に交換して、新陳代謝させることを想定していましたが、雨漏り、アスベストなどの問題をかかえ、一時建替えの危機にもさらされました。
でも、数年前から保存再生の声が上がり、最近、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」がはじまりました。運動の一環としてクラウドファンディングによる書籍がこの秋に出版される予定です。
当時は最先端たった建物も今では近隣のビルと較べると、どこかアナログ的で親近感を覚えます。「ガンバレ」って応援したくなります。
↑メディア・モンスター 曲沼美恵 著 草思社
↑中銀カプセルタワービル
↑カプセルは美術館前の埼玉県立北浦和公園で公開
ムスメの父親のキモチ
「お父さん、彼が『ご両親にご挨拶したいって』言っているんだけど」。
娘の彼氏の希望で私たち夫婦は、東京のある居酒屋でその彼と初対面しました。結婚を前提に付き合いたいという報告でしたが、娘が選んだ人だから特別にああだこうだと、言うことはありません。
妻は自分の家族や親戚のこと彼の仕事や家族のことなど、マシンガン・トークで2時間ほど聞き続け、娘と彼はその間にハイボールを5杯開けました。私は車の運転で酒が飲めないので、時々相槌、時々世間話で時間をやり過していました。
よく考えてみると、今まで娘が好きになる人がどういうタイプなのか考えたことがありませんでした。息子ならなんとなく、彼の仕草や接し方など雰囲気でわかるのですが…。実際、彼氏の何処に惚れているのか検討がつきません。
26年前、私は某ホテルのすし屋で妻の両親と初めて会いました。妻とは何となく付き合っている風でしたが、優柔不断な私はいつの間にか、外堀から攻められていました。話すこともあまりなく、「好きなものを食べなさい」という、妻の父親に言われるままに、黙々とトロやイクラやウニを頬張っていました。
後に聞いた話ですが義父の印象は、「よく食べる人だ」ということと「服装がなぁ」ということを話していたそうです。自由業だった私は、チノパンに開襟シャツ姿。当時大学教授だった義父は、スーツにネクタイ。TPOをわきまえていなかったことが、今になって悔やまれます。
そういえば今回、娘の彼はジーパンに洗いざらしのシャツ。で、私も似たようなラフな格好。居酒屋だったから、まぁ、いいか。
↑Where is this?
外国人にも大人気のゲストハウス
今から35年前、大学4年生の夏にヨーロッパへ放浪の旅に出かけました。卒業論文「都市のコミュニティスペース」の研究のためでしたが、やっていることはただの貧乏旅行。バックパッキングで、図面片手に街中を歩きまわりました。
交通手段は鉄道やバスで、ヨーロッパをほぼ網羅しているユーレイルパスを利用。宿は行当たりばったりで、その日に決めていました。ロンドンではB&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)、フランクフルトではYH(ユースホステル)、イタリアのサンジミアーノでは教会というように、旅費を節約するために泊まりました。
なかでも印象に残っているのは、オランダの首都アムステルダムの簡易宿泊所。「マリファナ」、「ハッシシ」と声をかけてくるダム広場で、売人と間違えられて一晩拘留されたという日本人の医学生に教えてもらいました。
2、3階の客室は体育館のような雰囲気。だだっ広いコンクリートの床には、鉄パイプの2段ベッドが雑然と並んでいました。部屋は男女共有で、上段には異国の若い女性が寝ていました。ふと上を見上げると、パイプに吊下げた下着などの洗濯物。ゆらゆら揺れて刺激的でした。
1階には共同のシャワールームがあり、朝の時間帯は大賑わい。ブースは10台ほどありましたが、次から次へとやってくるので、ほとんどの人は扉を開けたまま。全裸泡だらけてシャワーを浴びでいました。その大胆な光景は今でも目に焼きついています。
安宿では、いろんな国の人たちと出会いました。意気投合して飲みに行ったり、興味のある建物を一緒に観に行ったり…。観光よりもそういう人たちとの思い出のほうが記憶に残っています。
日本でも時代の移り変わりで、YH、民宿、ペンションなどかたちを変えて安宿ブームがありました。最近ではゲストハウスが人気上昇中。格安で泊まれて、相部屋なので交流が生まれたりします。そのため外国人にも好評です。
弊社ではそんなゲストハウスを白馬村に建設中です。オーナーは、オーストラリア人のG様。30坪ほどのこぢんまりとした建物ですが、部屋はロフト付きで、共有スペースにはランドリーやお洒落なシャワ-ブースがあり、リビングにはガス暖炉を設置いたします。11月竣工予定ですが、私たちも今から待ち遠しいです。
↑お披露目は11月予定
↑多雪地域・白馬なので筋違いを増やして耐震性を強化