家造りは一体感が大切
受験生を持つ親は、2月末から3月のこの時期はいちばん大切なとき。息子や娘たちが希望の学校に合格できるか、ハラハラドキドキします。風邪にならないように体調に気をつけたり、神社で合格祈願のお守りを頂いたり、まるでわが子に乗り移った気持になります。合格通知の報告を聞いたときは、胸が熱くなります。
家造りでもそんな場面があります。それは、お客様の住宅ローンの融資承認が下りたとき。特に、融資が難しいと思われた方が、金融機関にかけ合いながら、多くの書類を提出して、なんとか承認を取付けたときは、感慨はひとしおです。
ともに喜びを別ち合うと、家造りが楽しくなります。
時々「この金額に押えた建物にして」という見積り依頼を受けることがあります。そんな時は、できる限り希望金額に近づけるように努めますが、だからといって弊社が考えている建物の仕様を落とすことはしません。
予算がオーバーすれば、それを補う助成金がないか、同等品でコストが押えられる商品がないかなど、他の様々な方法をさがします。弊社で建築する家は、自分の家を建てるのと同じ。だから家造りのスタートラインは、それに携わる全員で気持ちよく立ちたいものです。
現場でも同じ。職人さんや納材店の営業さんは、工程の進捗状況を考え、お互いの仕事を尊重しながらすすめれば、みんなの気持が一つになります。
ドラマや映画制作、広告や雑誌などのように、いいモノを造り上げようとする一体感は、私たちにいい家を創り出すパワーになっています。
↑古材を使用した新築住宅。木組みが美しい
大好きな彼と末永くお幸せに
「じゃぁ、勝手にすれば」。「勝手にする」。
ニューヨーク・セントラルパーク前で、私の腕の中からガイドブックを奪い取った娘は、すたすたと反対方向に歩き出した。
こちらはそのまま真っ直ぐ進む。100mほど歩いたとき、クールダウンして振り返えってみると、彼女の姿は人ごみの中に隠れていた。些細な言い合いの口喧嘩、売り言葉に買い言葉。
私たちが目指していたのはニューヨークグッゲンハイム美術館で、そのすぐ近くだった。
20世紀巨匠のひとりフランクロイド・ライトよるこの建築は、別名「カタツムリの殻」と呼ばれ、中央部が大きな吹抜の大空間。その回りは螺旋状のスロープで、見学者は最上階までエレベーターで上り、そこからスロープを下りながら、壁に展示している作品を鑑賞する。
学生時代、いつか行ってみたい美術館のひとつだった。収蔵品は有名な画家ばかりだが、傾いている床で作品を見ているとジックリ眺めていられない。「この美術館は、展示物より建物そのものが作品なのだ」と気がつく。
ニューヨーク旅行へ出かけたのは、今から7年前で、娘が大学一年生の時だ。地下鉄を使わず、一日中ヘトヘトになるまでマンハッタンを歩き回った。ふたりとも方向音痴で、英語も通じない。イラつきながらの珍道中でした。
ホテルに戻ると、娘はベッドでふて寝。あの後、タクシーに乗りガイドブックに書き込んだ宿泊ホテルを連呼したそうだ。レストランの階段をさがすのに、まわりの人たちに「アガール」と叫んでいた娘だ。夕暮れ時、近所のステーキハウスに出かけた。
ニューヨークは、ペプシコーラから超高層ビルまで、何もかもがビッグサイズ。もちろんステーキも巨大。その歯ごたえは途方もなくかたい。ふたりでもぐもぐ噛み切れないまま飲み込む。「This is America」。
月日が流れ今月、娘が結婚式を挙げることになりました。
「お父さんバージンロードを歩くのでリハーサルをします」と、娘の夫に言われましたが、お父さんなんていう上等なものにはなれずに、今でもあの時の旅気分でいます。
↑ライト死後半年後の1959年に完成したグッゲンハイム美術館
↑吹抜けからの内部空間
まいけるさんからのLINE
朝8時7分、まいけるさんからLINEで一枚の写真が送られてきました。コメントはなしで。「ここの景色はスゴイですよ。天気のいい日は、必ずバルコニーから一枚撮ります」。
まいけるさんとは、白馬村の現場で木工事の造作をしている大工さんのハンドルネーム。現場に行くといつも楽しそうに、こう話します。
建物の西側から見るこの眺望は間近に遮るものがなく、北アルプスの大自然をひとりじめ。バルコニーは2階リビング&キッチンとひと続き。建物プラン段階から、この家のいちばんのセールスポイントとして計画してきました。
バルコニーは床にデッキ材を敷いて、室内空間を一続きにつなぐアウトリビングに。キッチンは、オールステンレスのアイランド型。料理しながらでも大自然の眺望を楽しめます。
敷地は必ずしもロケーションがいいとは限りません。ときには隣の家と接近していて、隣の窓と重ならないようにしたり、風の通りをうまくつくったり…。敷地の条件を考えながら、住み手のライフスタイルを読み取りカタチにしていきます。
その作業は手探りで手間がかかりますが、いちばん力が入るところです。
今年もそんな家造りを、地道に一歩一歩進めてまいりますので
時間をかけて理想の家を叶えたい方は、ぜひ弊社をお訪ねください。
↑まいけるさんから届いた北アルプスの風景
その時代を生きてきた証
朝起きると寝ぼけ眼の妻がいきなり「辞めなければいいのにね」、と言い出した。何のことかわからずにいると、最終回の「SMAP×SMAP」を見て急に思ったという。特別にファンでもなかったのに……。
1999年12月31日、信州生活5年目をむかえた私たち家族は、東京に車で帰省していました。渋谷周辺で渋滞を過ぎると視界がひろがり、カーブになり、前を走っている自転車軍団を追い抜きました。
フッとその軍団を見ると、白いジャンパーを着たスマップの面々。窓越しから見慣れた顔を間近に見て、一瞬戸惑いました。私たちが何故その場所を走っていたのか記憶にありませんが、キムタクの厚化粧したドーランの顔は、今でも頭の中に残っています。
5時間にも及ぶ「SMAP×SMAP」放映の中、1999年にプロモーションゲリラで、大晦日に原宿を自転車で疾走するという企画がありました。妻はそれを観て当時を思い出したといいます。映像をよく観るとは紺のステーションワゴンが映っています。「あれ家の車じゃない」という妻の話を聞いて、私も17年前のことが蘇ってきました。
2003年の春は娘の小学校卒業で中学校への入学。この時にみんなが口ずさんだのが「世界に一つだけの花」。当初、この歌を知りませんでしたが、ことあるごとに曲が流れるうちに、いつの間にか大ヒットしていました。
誰にでも人生の歴史の中で、時代を共有している出来事があります。「スマップが日本にいるだけで安心感があるじゃない」と妻がいうように、それは、自分が生きてきた証を感じるからだと思います。
家造りもその一つで、生涯の一大イベント。試行錯誤しながら完成させる家は、家族との思い出になり、拠りどころになります。
今年も多くの方の新築やリフォームに携らせていただきました。その過程は私たちにとっても貴重で、楽しい時間でした。来年はより質の高い家造りを目指していきます。
今年も最後の一日になりましたが、みなさまどうぞ、よい年をお迎えください。
↑桂離宮「竹の穂垣」
オプションという名の誘惑
「一生に一度だから行こうよ」。妻のそのひと言で、来年1月に結婚式を挙げる娘の衣裳合わせに立ち会いました。衣裳店は都内のとあるビルの3階。こぢんまりした店内にカラフルなウェディングドレスが、ショーケースいっぱいに並んでいます。
結婚式はいま流行の楽婚(ラクコン)。若いカップルにはうれしい自己資金3万円プラスご祝儀で結婚費用がまかなえるという。しかも支払いはご祝儀が集まってからの後払い。ホテルの会場は、人気の日取り以外の空き会場を利用するので、スタンダードな結婚式をロープライスで、挙行できるという。
ドレス選びは、二冊あるカタログから候補をピックアップ。それを試着してみて気に入ったものに決める。一冊目を開くと、「そうそうこれだよね。パンフレットの表紙に載っていたの」、娘の夫が興奮気味に話す。ゴージャスで、二人でいいねって話していたウェディングドレス。
それを聞いた店の人が、「すみません、こちらはオプションになります。お客様のご利用料金では…」と、もう一冊のカタログをすすめる。予算内のカタログでは、娘たちのテンション下がりっぱなしで、選択肢はこれならこっちのほうがまだいいかという、消去法に変った。
そばで見ていた妻は、「一生に一度だから」と私に目配せした。こういうときのアイコンタクトは、受け入れるしかない。オプション分を献上することにしました。
弊社ではお客様と話をしながら、プランを考える「逸品生産の家」を目指しています。建物仕様は人それぞれで、金額も一軒ごとの見積もり。同じ建物でも建築コストは変わります。
よく建物の本体価格は、坪35万円など聞きますが、これは見た目の価格を最低限の仕様で安く押えて、オプション工事で全体のコストを上げる手法を使っています。いろいろ追加していくと、結果的には高い買い物になります。しかも必要のないものまで付いていたりして…。
本体価格が安いからといって、オプション工事では「ま、いいか」とチョイスしがち。知らないうちに思っていたものとは別物で、しかも高かった、なんていうことにならないようにしたいものです。
↑一生に一度のウェディングドレス
あたりまえを考える
住宅設備機器は日々進化しています。
たとえば、ドアチャイム。25年前の家では、ボタンを押すと「ピンポ~ン」と鳴るタイプが主流でした。それが、いつの間にか会話ができるインターホンに変わり、その後、コストダウンしたテレビドアホンが標準装備になりました。
画像は白黒からカラーに代わり、今では録画機能付があたりまえ。不在のときにどんな人が訪ねてきたのか知るのに便利です。でも近頃新築のお家に訪問するとき、自分がどんな写りで撮られているのか、一瞬押すのをためらいます。セキュリティのためとはいえ、監視されているような窮屈さも感じます。
私が記憶に残っているチャイムの思い出は50年ほど前のこと。当時、小学校4年生だった私は、母と一緒に幼い弟を預かってもらうお宅を訪ねていました。そこは団地で鉄の扉。チャイムを鳴らしてもなかなか出てきません。
そんな時遠くから、「早く行ってドアを開けてあげて」という声が聞こえてきました。しばらくしてドアが開くと、出てきたのは小学校3年生の女の子。バスタオルを胸から一枚巻きつけただけの姿でした。髪は濡れたまま。どうやら入浴中で後から、その子のお母さんが脱衣室から出てきました。ドキドキして何も話せなかったのを覚えています。
初対面の出会いは、時に刺激的です。
最近契約していただいたお客様が、「可愛いアンティーク調のドアブザー」を希望されました。いまでは新築のチャイム、イコール、テレビドアホンが一般的ですが、これもアリだよねって思いました。何の疑いもなく決めてしまいがちですが、ときにはそれでよいのか、問い直してみるのも必要かもしれません。
先月松本市にあるウッドワンのショールームでは、KUROMUKU(クロムク)というシステムキッチンを発売しました。いままでのキッチンというと、どのメーカーも扉つきでデザインにそれほど違いがありませんでした。
今回のKUROMUKUは、黒のスチールフレームと無垢の木との融合。フレームが露出していて、木の板と抽斗で構成されていて、これまでの常識を覆しています。いままでなかった分、「感性が合えば即決」だとか。
ウッドワンプラザ松本(TEL:0263-29-0788)では、11月10日(木)~12日(土)まで、秋の新商品紹介イベントを開催します。興味がある方はぜひお出かけください。
↑ウッドワンプラザ松本。キッチンはKUROMUKU
↑(右)無垢の木の収納ツムハコとテンツリ。(左)スタイリッシュなデザイン階段
インターネットは情報のドブ川?
24年前、電子ネットワークサービスの普及促進を活動目的とした「電子ネットワーク協議会」という団体が発足しました。多くの会員は大企業で、神奈川県や千葉県などの地方自治体が協賛で参加。一時期その団体の会報誌の編集に携わっていました。
会報誌では、電子ネットワークに関する最新情報や通産省(現経済産業省)の施策などを掲載。専門家の話は難しくてわかりませんが、新しい世界が時代を変えていくという期待感がありました。
その時はじめて知った言葉が「インターネット」。
勉強会は技術的な話ばかりでしたが、ある講師の方の『インターネットは情報のドブ川だ』というひと言が、ずっと記憶の中に残っていました。
その後パソコンが普及し、今ではインターネットは誰もが利用するITインフラになりました。調べものをするときや新しいニュースを知るにはとても便利で、新聞やテレビを見なくても気軽に知りたい情報が手に入ります。ついつい頼りにしてしまします。
でも、時々疑問に思うことがあります。たとえば、美味しいレストランを探したいとき。口コミサイトで星の数が多い店に注目しますが、イマイチなことがよくあります。写真がきれいでも味が金額に見合わないと感じることもしばしばです。
ある大学では学生たちが調べ物をする時に、多くの学生がインターネット検索の上位にあがるサイトを丸写しして提出していたという話も聞きます。その内容が正しいかどうかも確かめずに。ネットにあることがすべて正解のように受取ってしまいがちです。
弊社には住宅に関わる様々な業者さんが来社されます。雑談の中では同業者の話がよくでますが、耳を疑うような話もあります。
たとえば、デザイン住宅を売りにする地元のビルダー。「設計士と営業と現場が意思の疎通がまったくなくて間違えだらけ」、「サッシの色を間違えて全部塗り代えさせていた」、「外壁の張り方が違ったので壊してやり直した」。ホームページには、お洒落な住宅実例が並んでいます。
お金をかけてホームページをつくっている地元の工務店でもあります。「工事代金をぜんぜん払ってもらえない」、「材料代がなくて工事が止まったまま」、「完成の目途がたたずお客さんが困っている」。ホームページでは、経営者が理想の家造りを語っています。
住宅を建てたいと思う時多くの方は、まず、どんな会社があるかホームページで調べます。そんな時、見た目やイメージだけで決めてしまうのは危険。そこにある情報や内容がほんとうに確かなのか、自分なりに見つけ出す力が必要になります。
弊社は情報のドブ川から、「これはホンモノ」として認めていただけるように日々家造りに取組んでまいります。