心地いい陽の明るさで目覚める
「最近、目覚める瞬間に感じるんだけど」。朝食をとっていた妻が話しかけてきた。何だろう、想像つかない。「鼻がムズムズし出すの」。花粉症の妻は夜、安眠するために薬を飲む。朝に近づくと薬が切れてくるのだそうだ。鼻が痒くて目が覚めるって……。
私の目覚めは、闇のなかでブルブルブル~ンという風音ではじまる。少し間があって、チャッ、チャッという足音。と同時に鼻と口のまわりをペロペロ舐められる。愛犬がやってきて起こそうとするのだ。少しの間というのはヤツの背伸びの時間。睡魔と執拗なペロペロ攻撃との葛藤。とにかくしつこい。最後はあきらめて、布団を跳ね上げる……と、まだ朝5時。
4月中頃になると目覚め方が変わる。吹抜けの小窓から陽が差し込み、しだいに部屋が明るくなってくる。全体を見渡し、「いま何時だろう?」と考える。窓からは新緑の木々。明るくなりはじめる時間を楽しみながら起きる。
一年間でこの季節がいちばん好きだ。窓を開けると少し肌寒いけど、空気が美味しくて清々しい。ゴールデンウィークには山桜の花びらが舞う。地味だけど新緑の風景には似合う。農業用水路からは、水が勢いよく田んぼへと流れる。
水面に映し出される北アルプスの山並み。田植えがはじまる耕運機の音。通りには体より大きいランドセルを背負った小学一年生の初々しい姿。「ゲッゲーン、ゲッゲーン」と声をしぼり出すような雉の声。あぜ道を駆け抜けるキツネ。
季節を感じ、その変化を楽しむ。そんな何気ない日常に癒されます。
↑あと数週間でここが水田に
↑路傍の草花