TVのない自然だけの素敵な過ごしかた
古民家再生がひそかなブームです。ナマコ壁を塗る左官屋さん、屋根葺きかえの修繕をする瓦店さん、建物を修復する大工さんなど、来春まで仕事がいっぱいだそうです。
弊社でも松本市中山で、古民家の母屋を民泊としてリノーベーションしました。天井を取り除き、梁を表して以前の吹抜けに戻し、浴槽、シャワー、トイレなどの水廻りは、機能的で清潔な部屋に変身させました。
丈夫そうな太い柱と梁が見えるようになると、どこか落ち着きます。
室内はキッチン、家具、照明器具などや薪ストーブなどお洒落にデザインされていますが、TVは置いていません。何故なら畑から採れたての食材を使ったBBQや水田の真ん中にあるコテージでの昼寝など、自然を満喫するメニューが揃い、TVなしでも日常生活を忘れさせてくれるから。
松本市里山辺のホテルで、最近リニューアルされた客室もTVを置かなかったそうです。SNSの影響で必要がなくなってきたこともあるかもしれません。それにかわってWi-Fiは必須条件になっています。
TVがない宿というと、30年前に泊まったロタ島のパウパウホテル(1999年閉鎖)を思い出します。もちろん電話もなし。ロタはグアムとサイパンの中間地点にあり、透明度の高いサンゴ礁の海は、ダイバー憧れの島として今でも知られています。
観光地のような買物を楽しむ土産物屋はありませんが、島民たちは素朴でフレンドリー。町を歩いていると気軽に手を上げ、声をかけると家の中まで気軽に招いてくれました。
パウパウホテルは、自然しかないホテルですが、プールサイドにあるバーで一日過ごしたり、小型潜水艦で海中探検したり、スタッフと天体望遠鏡で満天の星を眺めたり……、それでだけで十分普段の生活を忘れさせ、心を癒してくれました。。
滞在時に集まっていたお客さんは、社員旅行に女性社員とふたりだけでやって来た弁護士先生、スキューバーダイビングのインストラクターに会いに来たOL、社員を引き連れ海に潜りにきた町工場の社長など。スタッフはというと、英語がわからず日本語と身振りで受け答えする入社したての男子。小説でも書けそうなユニークな方たちばかりでした。
東京で広告や雑誌の仕事をし、旅行ガイドブックでロタ島取材に行った私は、飛行機の不具合でこの小さな島で、1日半足止めを食いました。
先日久しぶりに1990年7月16日発行のこのガイドブックを引っ張り出してみると、当時の記憶が蘇ってきました。編集後記には懐かしい旅好きのライターばかり。その一部を見ると……。
「神戸からやってきた弁護士の先生、チャモロ・ディナーではヤシガニどうもありがとうございます。飛行機が遅れて「30時間もかかった」とブツブツいいながらも、南の島の楽しい話をしてくれたNさん、今頃どうしているのかナ。ノリが南国チックなスタッフのIさん。今夜も宿泊客のために星を語っていますか? ボクが今回気に入ったのはロタ島のパウパウ・ホテル。ここに滞在すると誰もがナチュラルな気分になれる!
上川 良夫」
「ロタ島初体験の私は、手つかずの自然が残るこの島をすっかり気に入ってしまい仕事を忘れて、リゾート・ライフを満喫(もちろん、一緒に行ったスタッフも同様)。「やっぱり取材する側もリゾートしなきゃ、いい原稿は書けないもんね…」というスタッフの弁になるほど、と思いパウパウ・ホテルのプールサイドで久しぶりにのんびり。心とカラダをリフレシュしてきました。もう一度行きたい場所です。
中山 涼」
このペンネーム、上川さんは私、中山さんは来年結婚30周年をむかえる私の妻です。
↑大自然のど真ん中、中山の水田コテージ
↑ロタ島はグアム、サイパンのオプショナルツアーとして掲載