2045シンギュラリティ
今から36年前、ある出版社の編集長が会社を退職して、新しいビジネスをはじめました。それは大企業のシステムエンジニアを引き抜き、パソコン検索して必要な情報を入手するソフトウエア会社で、今でいうベンチャー企業を目指していました。
社名にはHAL(ハル)という頭文字。この文字はアルファベッドで、IBMを超える=上をいくという意味が込められています。
大学を卒業した私は、その会社でレストランやカフェの情報収集とタウン誌の編集にたずさわりました。まだインターネットが普及していない時代。タウン情報誌などほとんどない時代で、一軒一軒お店をまわりました。
そのデータはコンピュータに入力して、東京のターミナルビルの一室で、情報を提供していました。
たとえば、カップルが訪ねてきたとき「この近くに夜景が見えるお洒落なレストランがありませんか?」とか、女子高生が「ソフトクリームがおいしいお店を教えてください」などの要望にたいして、コンピュータでキーワード検索すると、希望の店を見つけられるようになっていました。
今ではインターネットで検索すれば、簡単に探すことができますが、当時は画期的でした。Windows95が登場する10年以上も前の話しで、ワープロが200万円もして社内ローンで購入したのを覚えています。
それから目まぐるしく時代は変り、通信手段は固定電話から、ポケベル、TV電話、携帯電話、スマートフォンと変化し、かつて原稿や図面などを急ぎで送る時は、FAXやバイク便を使っていましたが、今ではメールで簡単にやりとりができるようになりました。
現在最も注目されているのは、AI(人工知能)。基本データをハイスピードで取込み、すごい勢いで進化しています。囲碁や将棋界ではトップ棋士が敗北したというニュースは衝撃的でしたが、最近ではそれほど驚かなくなりました。
先日IT関係の仕事をしているお客様から、将来はAIに取って代る職業が多くなると聞きかされました。たとえばデータを蓄積して判断する会計事務所や弁護士事務所。これはAIが特意とするところで、人間の仕事として残るのは痴情のもつれなどによる離婚問題くらいだそうです。
車の自動運転は2020年を目指し、セキュリティシステムでは街中の不審者を見つけ犯罪を未然に防ぐ研究も進んでいます。
建築業界でも外壁工事は、ロボットによって行われるようになる日はそう遠くないといわれます。私たち人間がAIにできない仕事はどこにあるか不安になります。
30年前、今日のような時代になるとは想像がつきませんでした。でもこれからは、5年先、10年先が想像できません。AIの知性が全人類の知性を超える時点=シンギュラリティは、2045年といわれています。
今年還暦をむかえる私にとって、この世界を見れるのか? 見みてみたいような、見たくないような……、そんな気持です。
↑最近、アメリカ、オーストラリア、中国などのお客様のために、コミュニケーションツールとして購入した音声翻訳機「イリー」。旅行用の簡単な会話程度ですが、AIの発達で翻訳能力が格段にあがってきているとか