地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

家造りは日々進化、快適さを目指して…

「住宅の断熱性能と明るさ感に関する研究」という講演論文を読みました。これは首都大学東京都と旭化成建材の方々によるアンケート調査に基づいた印象評価実験です。

 

対象者の居住する窓の断熱性能レベルを、Ⅰシングルガラス・アルミまたは鋼製枠、Ⅱペアガラス・アルミサッシ枠、ⅢLOW-E断熱ペアガラス・アルミ樹脂複合または樹脂枠の3つに区分し、住まいの温熱環境満足度や明るさの、行動・習慣・生活意識を調査しています。

 

実験概要は茨城県にある高断熱住宅で、対象者が空間構成の違いで明るさや印象にどのような影響を与えるかを把握するというものでした。

 

その方法は、南面で吹抜けを有する居間で「吹抜けを塞いだ状態」、「2階の窓ブラインドを塞いだ状態」、「1階の窓を小さくした状態」、「通常の状態」の4パターンでの評価です。

 

実験時には、一階の掃き出し窓を建築基準法に準じた大きさでなおかつ規格サイズにしたり、吹抜けを塞ぐ素材は壁面と色味の差が少ないものを使用したりして、現実に即するようにし、できるだけ印象評価への影響が少ないよう配慮しています。

 

詳しい内容については省略しますが、実験住宅と居住住戸から断熱性能が高いほど吹抜け採用率が高く、区分Ⅲは区分Ⅰの2倍の採用率であること、区分Ⅲでは吹抜けがあっても上下階や部屋間の温度差が少なく、快適な環境を作り出すという結果が出ています。

 

また、昼間照明を付けない状態での明るさの満足度については、断熱性能が高い窓ほど高いという結果が出て、断熱性能と明るさには相関係あるという結論に至っています。

 

寒冷・信州では、吹抜けのある家は2階に熱が逃げて寒くなるからNGと言われ、北海道では少し前まで熱ロスを避けて居室の窓は小さくするのが一般的でした。

 

隙間風と結露で健康を害していた家は、住宅性能が向上し日々進化しています。来年もより快適で住まい手に寄り添う家造りを目指していきます。

 

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人生の節目で考えること

私事ですが今月26日で還暦を迎えました。といっても実感はなく、プロ野球の選手が2000本安打や200勝を達成したとき、「単なる通過点なので…」なんて言うのと同じで、その後も淡々と過ごしています。

 

そういえば30歳になるとき3歳年上の先輩が、「ボクは30歳の前日に銀座の東京温泉で垢すりをして30年分の垢を落してもらったよ」という話を思い出しました。

 

私も考えていたのですが、徹夜仕事でかないませんでした。数年後、友人との飲み会の後に酔い覚ましに体験しました。

 

お風呂に浸かっていると、ごっついオジサンに手招きされてベッドに寝かされました。態勢はうつ伏せ。まずは生温かいお湯を全身にかけられ、気持ちよくなったところで、ごわごわした皮のようなもので、体を磨かれました。

 

ゴシゴシ擦っていますが、痛いという感覚はありません。お湯で流しながら擦るため垢はボロボロでる感じではありませんでしたが、その爽快感は今でも覚えています。

 

今回60歳の前日に何をしようか考えていたのですが、その日は日曜日で東京に住む娘家族と中古住宅を見に行く予定になっていました。

 

東京はとにかく土地が高く、23区内は坪100万円以上があたり前です。その周辺の神奈川、千葉、埼玉も急騰しているところが多く、新築は若いファミリーには手が出せません。

 

そこで見に行ったのが千葉県郊外にある中古物件。約37坪の敷地に築11年30坪の建物。

価格は2,950万円と相場よりは低価格。その訳は土地が旗竿の敷地のためで、三方を建物に囲まれています。都会ではこんな条件の建物が多く見受けられます。

 

 

三週間前に東京・日野市にある「そらどまの家」の構造見学会があり、そこも旗竿の土地でした。隣との壁が接近して、窓の位置も取りづらく採光や換気するのに工夫が必要でした。

 

建物のオーナーは、採光システムを販売しているメーカーの社員。特殊鏡面アルミ材ダクトを使って、室内に太陽光を取込むこのシステムは、人工的な照明とは異なり健康的な自然光を感じられるのが魅力です。

 

仕事柄、「このシステムを自分の家でぜひ導入したい」と思っていたそうで、旗竿というハンデのある敷地を克服し、おまけに土地価格を相場の2/3に押えられたそうです。

 

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↑トップライトから工事中の1階に降り注ぐ自然光

タイニーハウスで暮らすという選択

東京で過ごしていた28年前、中央線沿線の住宅地に建つカメラマンの実家を訪ねたことがあります。彼はブラジル人女性と結婚して、アマゾンの僻地に暮らしていました。

 

仕事を依頼するときは、数キロ離れた家の住人に電話して呼び出してもらっていました。連絡がつくまでに一週間かかることもざらでした。

 

「電話がないところで仕事するのは大変じゃないですか?」。そんな質問をすると、「どうしても仕事の依頼をしたいとなれば、コンタクトをとろうとする人が一生懸命になるからどうにかしてくるもんだよ」。

 

バブル時代、仕事にあくせくしていた私には、その言葉が新鮮でした。ゆるい時間の流れのなかでのんびり過ごす生活。スマホを片時も離さない現代人なら、一日でも連絡が取れなければ不安を感じてしまいますし、すぐに連絡しないと脅迫観念に襲われます。

 

閑静な住宅街にあったカメラマンの仕事場は、物置を改造した一坪ほどの空間でした。写真を現像する暗室も兼ね、現像液のアンモニアのにおいがぷーんと鼻につきます。ピンで止められた紙焼きの作品。そこには彼の世界があり、こんな小さな空間で仕事ができる彼を羨ましく思いました。

 

欧米ではタイニーハウス、小屋のような小さな家が注目されています。タイニー(tiny)とは、ちっぽけな、ちっちゃなという意味。室内には、キッチン、トイレ、シャワーなど生活に最小限必要な設備を備えています。

 

アメリカでは、床面積200㎡を越える平屋から、その1/10のタイニーハウスに住みかえ、大自然の中で家族との生活を大切にする。そんなスタイルを実践する人たちが増えてきているそうです。

 

弊社では白馬村の別荘地に、小屋を改装したタイニーハウスを建築中です。施主は東京在住でリタイアしたご夫婦。外観は古びていて住めそうになかったですが、内部は意外にも小奇麗で、奥様はその小屋をとても気に入りました。

 

改装は「フレンチカントーリーのキッチンに」、「洗面の水栓は真鍮のレトロなひねるタイプ」、「シャビーな雰囲気を出したい」…など、奥様の思いがいっぱいに詰まっています。

 

それにつられて、「シャワーの位置は変えたほうがいいですよ」、「フェイクのドアはここに取付けましょう」など、大工さんもノリノリで仕事を楽しんでいます。

 

小さいからこそ、プライベート空間がより充実する。タイニーハウスは、自由で豊かな人生を送るひとつの選択肢かもしれません。

 

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白馬村の別荘地で改装中のタイニーハウス

 

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↑フレンチカントリー風キッチン。天板は自然石で、吊戸と換気扇をセット購入

 

この秋は建築ラッシュ!?

弊社のスタッフはこれまで3人でしたが、9月から現場管理を担当するMさんが入社しました。彼は元大工さんで、木造在来工法のプレカット工場、建材屋、地場の工務店の現場代理人などを経験し、まだ1ヶ月なのに弊社に欠かせない存在になっています。

 

私が一緒に仕事をしたいなと思う人は「建築が大好きな人」。意外かもしれませんが、この業界何となく入って来てしまう方も結構います。

 

もちろん日々の生活や家族のためにお金も必要ですが、家造りを施主さんや職人さんなどすべての人たちと「楽しみながらカタチにしていけたらいいな」と、思っています。だから、探究心があって仕事に熱中している人を見ると、つい誘ってしまいます。

 

Mさんもそんなひとりです。

 

先日、札幌の設計事務所の依頼で、住宅の柱を固定する柱脚金物を設置することになりました。設計事務所の図面にはその詳細図がありましたが、実際そのようなものはなく、既製品も探してみましたがどうもしっくりしません。

 

そこで設計事務所から提案された図面をもとに、安曇野市堀金にある金属加工場で製作依頼することにしました。以前、金属板の曲げ加工を頼んだことはありましたが、建築部材としてお願いするのははじめて。

 

熟練の職人さんに恐る恐る図面を見せると、ニコニコしながら工場をまわり、「この厚みのステンレス板は熱の温度を上げながら切断して…」、「焼き付け接合すると洗浄するのに時間がかかるんだよ」など丁寧に説明してくれました。

 

プライドを持って仕事をする町工場の職人さんの姿を見て、つくづくモノづくりはいいなと、感じます。

 

これまで少数精鋭、ワンストップで対応しましたが、今年の秋は50坪を超える別荘から、約100坪の集合住宅、160坪の木造ビルなど大型物件ばかりで、私たちのような小さな会社ではてんてこ舞いでした。

 

そこにMさんや新たな協力業者さんが加わり、少しホッとしています。

 

現在進行中の物件は、新築7件、リフォーム2件、リノベーション1件。この先、古民家再生もあり、まだまだ私たちの奮闘は続きます。

 

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↑ステンレス製のオリジナル柱脚金物

 

 

リゾート気分を味わうウッディな集合住宅

家造りをしていると、ときにはチャレンジャーになることがあります。それはコストの面だったり、建物の施工方法だったり……、いつもとは一味違ったものを創ろうとするとき。

 

弊社で建築している住宅なら、この規模のこの仕上げなら、だいたいこのくらいの金額になるということが経験上わかります。

 

でもが「もう少し安くならない?!」とか、「こういう雰囲気にして欲しい」など、予算度外視で無理難題を迫られてくることがあります。

 

そんなとき丁重にお断りすることにしていますが、「もしかしたらこんな素材を使用したらとか、こんな施工方法に変えたら何とかなるのでは」、と思うことがあります。

 

それは難しい課題に直面したとき難問を解くような感覚で大変ですが、解けたときのことをイメージすると、少しだけ快感だったりします。

 

今月着工した大町市にある集合住宅は、そんな建物のひとつです。

 

限られた予算の中で、木をできるだけ見せた「コテージ風のアパートにしたいとい」、というオーナーからの希望に四苦八苦しました。最近のアパートは、お洒落な外観が多いですが、室内は既製の建材を使っているので、確かにあまり代わり映えがしません。

 

ビジネスホテルに泊まっているような雰囲気で、少し冷たい感じ。

 

そこで大工のTさんと図面をみながら、どうしたらコスト押えて試行錯誤しながら考えました。たとえば柱や梁などの構造躯体の一部を表わしに。1階の天井は2階のパインの床材をそのまま見せたり、屋根の破風板に使用する杉材をウッドデッキ材に使ったり…。

 

建て方のときに、野地板を羽目板にして天井仕上げにする、その上に断熱材を入れるなど、ふだんはやらない施工にトライしています。

 

大町駅から徒歩5分、ショッピングセンター「フレスポ大町」の西に建設中ですので、近所にお越しの際は、ぜひ覗いてみてください。

  

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 ↑基礎工事中の集合住宅は今週28日に配筋検査が完了して、9月下旬に上棟予定

 

空気の見える化

 

TV番組で水道水が飲めるのは世界で9カ国しかないことを知りました。日本はその国の一つですが、最近はペットボトルに入ったミネラルウォーターを飲むのが、あたりまえの時代になってきました。

 

私が子供の頃は、水道の蛇口をいっぱいに開けて、水をがぶ飲みしていました。特に真夏などの運動後は、無心にゴクゴク飲むのが爽快でした。最近は水分補給のために体にいいという飲料水が、店頭いっぱいに並んでいます。

 

20代の頃は外国に旅すると、「郷に入っては郷に従え」とばかりに、気にせずにどこの国の水道水も飲んでいました。ヨーロッパに多いい硬水も、パキスタンのレストランで出されたキラキラ光る物体入りの水も、一気に飲み干しました。幸いにもお腹を壊すことはありませんでしたけど……。

 

23年前に安曇野に移住してきた時、水道水を飲んで「美味しい」と感じました。北アルプスの雪解け水を使用したわさび棚で有名な土地ですが、その水は一口飲んで今まででいちばん美味しい水道水と感じました。

 

先日、最新換気システムを学ぶ「空気の質を体験ツアー」に参加しました。愛知県にあるこの施設は、換気扇の製造工場の隣にあり、1種換気(給気と排気が機械換気)、3種換気(外部からの自然給気と機械換気)、無換気の3つの部屋で空気の質を実体験できます。

 

住宅展示場のような建物1階には、面積や間取りを同じ条件にした部屋で、温度、湿度、微粒物質などの測定値が数値でわかるようになっています。

 

無換気→3種→1種の順番に部屋に入り、空気の質を比較していきます。当日は、外気温35度を越える猛暑の中、室内はエアコンが効いている26度。

 

無換気室は空気が澱んでいて湿気がありましたが、エアコンの冷えきったからだには程よくて…。ただ3種、1種と部屋を移動すると、測定値の空気環境が良くなり換気は重要だと納得。

 

最後にリビングで開発中という微風を体験。そこには森林浴で体にいいといわれるフィトンチッド成分が含まれ心地よかったのですが、信州の森の中を歩く爽やかな風はもっと気持がいいと、再確認しました。

 

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↑換気扇の製造工場に隣接するオフィスビル。壁には太陽光発電パネルを設置

 

ディテールにこだわる

「雰囲気がよくて感じのいい建物」、「外観のデザインがちょっとダサいかな」……など、見た目で家を判断することがあります。

 

それはちょっとした違いで決まります。たとえば、間取りを優先して外観の窓位置がバラバラになったり、壁タイルの割付が片側に寄ってしまってバランスが悪くなったり、言わないと気づかないこともありますが、気になり出したらその部分ばかりに目がいってしまいます。

 

造り手としては、建具や窓枠の水平ラインを合わせたり、余分な線を減らすために窓枠をクロス巻込みにするなど、いかに室内空間をシンプルに見せるかを考えます。

 

私は建築特集をした雑誌やユニークな住宅を拝見するTV番組をよく観ます。それは自分が今まで使ったことのなかった素材や、考えたことのなかった空間の造り方など、家造りに活かせる物がないか、常にアンテナを張って探しているからです。

 

どこかで試してみたいと思うものがあったら、写真で画像にしたり、映像を録画したりして残します。それは街歩きをしているときでも同じ。

 

宿場町の通りで美しい窓格子を見つけたら、写真を撮りその格子の幅やピッチを数えます。

 

庭を囲む朽ち果てた木の塀。丸太を切りっぱなしにして並べただけなのに、自然で周囲と馴染んでいる。その施工はどうなっているのか、どうやって止めているのか? 正面、裏面、側面と細かく観察します。

 

裏通りに流れる小さな水路。人工的に石を配しているのに街並みにマッチしている。

 

そんな細かいティテール(詳細)観ていると、つい時間を忘れていまいます。いつかどこかで試してみたい。そのためにディテールを集めた抽斗を造っています。

 

何かいいなと感じるちょっとしたこだわりのディテール。

 

ふとしたところにそんな発見があるから、街歩きはやめられません。

 

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↑高原にあるイングリッシュガーデンの木の塀

 

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郡上八幡の裏道。石積みの水路がユニーク