地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

美しき安曇野の残像

最近、米国出身のアレックス・カーさんが出演するTV番組を見ました。彼は東洋文化研究家であり著述家。留学中に日本中を旅し、徳山県祖谷の自然に感銘を受け、300年前の古民家を購入して、少しずつ修復しながら住居にしました。現在は篪庵(ちいいおり)として見学や宿泊ができます。

 

カーさんの著書「美しき日本の残像」(1993年、新潮社)では、古き良き時代の日本の原風景が失われていく様子を嘆いています。鉄塔と電柱やコンクリートの護岸が美観を壊し、街にはパチンコ店、アルミサッシの窓で造られた住宅、何処へ行っても代わり映えがしない風景。同じ街に見えてしまう。

 

さらに昨年出版された「ニッポン景観論」(集英社新書ビジュアル版)では、派手な看板や田んぼのなかで目立つブルーシートにも、景観への配慮を訴えています。この本を読んだ後、北アルプスを望みながら車を走らすと、意味のない看板や何処までも続く電信柱などが次から次へと現われ、あまりにも多すぎて具合が悪くなってきました。

 

安曇野を訪ねた30数年前の初夏、夕食後にペンションの主人から「これからホタルを見に行きましょう」と誘われました。何処まで行くのかという疑問を感じながら、ワンボックスカーに乗り込むと、到着したのは近くの田んぼ。そこに、ハザードランプをチカチカ点滅させると……。

 

車のまわりに小さな光の粒が集まってきて、その数がみるみる増え、満天の星空を漂いながら宙を舞う。こんな世界は初めてでした。いま思うと東京から安曇野に移住しようと決めたのは、この時だったかもしれません。

 

安曇野の田園風景は今でも有名ですが、ホタルはいません。田んぼも家が建ち、虫食い状態。建物にも統一感がなくきれいな街並とはいえません。少しでも自然にとけ込む街並みを創りたい。そんなことを考えながら、家造りに日々精進しています。

 

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↑今日の安曇野の風景。正面は有明