地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

OK Google、住宅のIoT化って?!

6月初旬、都内のビルの一室で、電気メーカーの住宅設備の説明会ありました。

 

その内容は、「家族みんなが、住むほどにカラダもココロも元気になる。IoTを活用した住宅の話」。最近よく耳にするIoTは、Internet of Things=モノのインターネットの意味。モノに通信機能を搭載して、そこからインターネットに直接アクセスすることで、自動認識、制御、遠隔操作を行えるシステムです。

 

AIやロボットが活躍する現代は、第4次産業といわれています。特にインターネットサービスは日々進化し続け、IoT商品・サービスは急速に増えています。

 

住宅でいえば、太陽光発電システム、蓄電池、給湯器、エアコンなどの住宅設備がインターネットとつながること。

 

たとえば真冬の外出先からの帰り道。家は暗くて寒くて、すぐに部屋を温めてお風呂に入りたいのに、それは無理。凍りつく部屋の中で、電気を付けて、エアコンをONにして、お風呂のお湯をはる。こんな経験は誰でもしているはずです。

 

IoT化すると、帰宅前にスマホで照明を点け、エアコンで部屋を温め、湯をはったお風呂に入れるように準備する。日々の不便や我慢していたことが、ストレスレスになり快適になります。遅刻しそうで慌てて家を出て、玄関錠をかけたか不安なとき。IoT化なら直ぐにスマホで施錠確認ができます。

 

2017年、グーグルやアマゾンからスマートスピーカーが発売されました。音声操作に対応したAIアシスタントで、住宅業界でも注目されています。たとえばグーグルのスマートスピーカーでは、「OK Goole、電気を点けて」、「OK Google、エアコン付けて」とお願いすると、音声で機器が連携して操作してくれます。

 

住宅の商品開発は、様々な技術進化により、省エネ住宅→スママートハウス→ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)と取組んできましたが、普及拡大するにはまだ至っていません。そこには建築費アップというコスト面での課題が ありました。

 

IoT住宅仕様は、月々のサービス使用料無料、20万円ほどで設置可能という商品も出ています。ここ数年で一気に普及しそうな気配のIoT化に、住宅のさらなる進化を感じます。

 

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パナソニックAiSEG2カタログ。声で機器をコントロール

 

 

 

浮遊感を楽しみたい!

家造りでなかなか表現できないのが浮遊感。宙に浮いているようなフワーッとした感覚でジェットコースターに乗っているときや、スキー場でリフトに揺られるときのちょっぴり不安な気分です。

 

飛び込み台の先端に立ってジャンプする時のドキドキ感や、仰向けになって大海原海に漂うのも、その一つかもしれません。身を任せることで、不安定なのに気持ち良さを感じます。

 

映画「タイタニック」では、デカプリオ演じる主人公ジャックが、上流階級の娘ローズと運命的な出会で、互いに惹かれ合い船の舳先で両手を広げる有名なシーンがありますが、あのシーンを観るたびに浮遊感を感じます。

 

建築では、耐震や耐風圧を考えて安定感のある建物をいちばんに考えます。

 

でも時々遊びの空間が欲しくなります。そんな時、趣味に没頭する隠れ家、ゴロンと寝そべるだけの畳コーナー、炎を見つめるための薪ストーブ…。

 

敷地にゆとりがあれば建物に張り出したテラスを設置して、くつろぎの空間でのんびりしたいものです。

 

先日そんな素敵な場所を白馬村岩岳山頂でみつけました。昨年10月15日にオープンした「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(ハクバ・マウンティン・ハーバー)」です。標高1,289mの山頂テラスからは、白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬槍ヶ岳)の絶景が一望できます。

 

もともと冬場はスノーボーダースキーヤーで賑わっていましたが、テラスが完成してからはオールシーズンで、雄大北アルプスを間近に体感できるようになりました。先端に突き出した展望テラスは、壮観でゾクゾクします。

 

こんな空間をいずれは住宅の中にも表現できたらいいなと思っています。

 

山頂の山麓駅へのアプローチは4人乗りのゴンドラリフト「ノア」で約8分。下界を見下ろすスリリングな眺めも魅力。

 

テラスにはニューヨーク老舗のパン屋「THE CITY BAKERY(シティ・ベイカリー)が出店し、信州サーモンや信州豚のサンドウイッチがおすすめ。

 

ぜひお出かけください。

 

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↑「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」は絶好の撮影ポイント

 

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↑ニューヨーク生まれの「 THE CITY BAKERY」。

 信州の素材を使った白馬限定のサンドウイッチ

 

 

 

 

 

原人の対応力

T大工さんとはじめて仕事をしたのは15年以上も前こと。確か松本市内の料亭跡地にそのオーナー家族の自宅を建てたときでした。

 

「床の間には倉庫に保管してあったネズコの木を使って」、「コーナーにはジグザグに枠を模って稲妻を表現したい」、「玄関脇には竹の床柱とポスト口を」…。京都の建築家の細かい注文にも難なく応え、楽しい家造りができたのを今でも覚えています。

 

その後、木造三階建ての旅館の耐震工事では一緒にジャッキアップして床を持ち上げたり、木造の難しい納まりでどうしたらいいか相談したりと、同じ年齢ということもあって、私の家造りには欠かせない存在になっています。

 

Tさんは宮大工の弟子として10年以上働いていたので、寺社をはじめ和風建築が得意。大町在住で田畑を耕し、ニワトリを育て、ミツバチの養蜂をして日々の生活も満喫しています。また地元の猟友会に所属し、メンバーとシカやイノシシなどを獲りに行くのを趣味にしています。

 

獲物はその場で解体して皆で分けるそうで、時々シカやイノシシの冷凍した生肉を持ってきてくれます。今年いちばんの収穫はクマの肉。妻にその塊を渡すとそのワイルドさについていけないようで、まだ一度も会ったことのないTさんを「原人」と呼ぶようになりました。

 

最近は新建材を使った住宅が増え、Tさんのように手加工で昔ながらの家を建てる大工さんは減ってきました。手間暇かけるよりも、ラクして効率よく造るのが最優先に。

 

こちらが求める施工に対して自分流を主張し、できるアピ-ルをする職方もいますが、いざ依頼すると材料の拾いができなかったり、見映えを考えずに施工して仕上げがきれいでなかったり、残念なことがときどきあります。

 

弊社では昨年の暮から松本市内で古民家の改装工事をしています。メイン大工はもちろんTさん。工事は梁や柱を新建材でくるんでしまった建物を元の状態に戻し、浴室やトイレなどの水廻りは一新して機能的で快適に造り直しています。

 

骨太の構造躯体を復元するのは、ワクワクします。ただ新しくするのではなく、あるものを生かすことを考えます。

 

新建材の床を取り除こうとTさんがのこぎりを入れた時、かすかにケヤキのにおいがしたそうです。あわててのこぎりを止めて床をはがすと、もともとあった元のケヤキの一枚板が表れました。そこで板に貼り付いた接着剤を削り落とし、以前あった状態に戻しました。

 

また、新たに室内ドアを建て込む時には今ある建具を利用できないか、壁を解体するときはそこだけ違和感がないようにするにはどうしたらいいか、などTさんはいつも一緒に考えてくれます。

 

今年の3月、引き渡した大町の集合住宅でもコラボしました。社宅として造られた建物は、限られた予算の中での試行錯誤の連続でした。自然素材を取り入れた開放的な空間は入居者の親御さんにも好評で、私たちの仕事の励みになりました。

 

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↑2階へと続く露出階段

 

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↑単身者向けの集合住宅

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↑ロフト風の2階は山小屋をイメージ

 

 

 

新元号をむかえて…

「最近は戦争がないよね」。妻と結婚した頃、義祖父が話したこの言葉には衝撃を受けました。

 

日清戦争(1894年~1895年)、日露戦争(1904年~1905年)、第一次世界大戦(1914年~1918年)、シベリア出兵(1918年~1922年)、満州事変(1931年~1932年)、日中戦争(1937年~1945年)、第二次世界大戦・太平洋戦争(1941年~1945年)。

 

確かに明治生まれの人にとっては、10年に1度は戦争が起こったことになります。

 

いまでも世界中では毎日のように内戦やテロが勃発していますが、私たち日本人にとっての戦後は第二次世界大戦で、それ以降は平和な日々を過ごしています。

 

私もそのひとりですが、戦争から13年後に生まれた身にとっては、みんなが一つの方向に向かい一生懸命に働いていた気がします。がむしゃらだったけれど、近所の人たちも親切でほっこりする場所がありました。

 

元号をむかえて平成という時代はIT化が進み情報量が爆発的に増加しました。情報をさがす作業はインターネットで、コミュニケーションはSNS。いまではスマホがなければ不安に駆られて、何も手につかないという人も多いはず。

 

ある事務機器メーカーの営業の方から、「最近の若い人はスマホタブレットでタッチ操作しかしないので、キーボードが苦手ない人がいるみたいですよ」という話を聞きました。

 

先日、「夕食にカレーが食べたい」という妻の希望で、大町市にあるネパール料理の店に行きました。その店は市街地から少し離れた、人気のないアーケード商店街にありました。

 

スナックの看板が目立ち、店の前では子供たちが机を並べて宿題したり、サッカーボールを蹴ったり…。

 

「昭和の雰囲気。ノスタルジック」と思わず目を合わせました。

 

店内は閑散としているのではと思いきやいっぱいで、若い女性や日本語を話す外国人家族など熱気に包まれていました。「ちょっと待ってね」と店主は小上りテーブルに座っていたカップルのスペースを詰めさせ、その隣に私たちを招きました。

 

テーブル正面には黙々とスープをすするひとりカレーの女性。

 

こんなに人が近い食事は久しぶり。ダルバートという料理はやたらにしょっぱかったですが、それ以上に店の雰囲気はインパクトがありました。

 

時代が変っても「人間くささを大切にしたい」。新元号でも突き進みます。

 

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↑懐かしさを感じる大町名店街

だから建築はオモシロイ!

40年近く前にある雑誌で、日比野勝彦(現東京藝術大学教授)さんが、渋谷のマンションを改装してアトリエを構えたという記事を見ました。当時彼は段ボールを使った作品が話題を呼び、新進気鋭のアーティストとして注目されていました。

 

アトリエはRC(鉄筋コンクリート)造で天井をすべて取り壊し、RCの柱と梁がむき出しになり、設備機器のダクトもそのまま表していました。構造躯体の姿は、工事中のようにも見えますが、何だか新鮮で斬新でした。

 

建築家・安藤忠雄さんが1979年に日本建築学会賞を受賞した住吉の長屋は、RC打ち放しで室内外とも何も仕上げを施していない小住宅で、その発想は多くの建築家にインパクトを与えました。日比野さんのアトリエにもそれに似た感覚でした。

 

今でこそRC仕上げの店舗や美術館などはふつうに見られますが、その頃は既成概念を打ち破るための挑戦だったのかもしれません。ただし、RC打ち放しは断熱性能に劣り健康の弊害が懸念されていますが…。

 

3月から古民家改修工事がはじまります。長屋門のある大きな屋敷で、母屋のほかに土蔵や蚕室などの建物もあり、民泊施設としてリニュアルしています。リビングには太い梁が組まれた吹抜けがあり、その空間には一瞬圧倒されますが、なかに入ると懐かしさと心地よさを感じます。

 

それなのに隣のダイニングキッチンは20年前にリフォームして、天井は平天井のクロス貼り、壁も漆喰からクロスに変っていました。今風の新建材で、この空間だけミスマッチ。

 

ずっと違和感を覚えていたのですが、ある時リビングの吹抜けを眺めているうちに「ここも天井を剥がして梁を見せたらいんじゃないかな」と、思い付きました。頭の中のモヤモヤが晴れた瞬間でした。

 

ダイニングキッチンでは、キッチンを新規造作することになり、それにともなって位置も移動することになっていました。でもリフォームしたときの床暖房が問題でした。配置が変るため給排水配管のやり直し、そのためには床暖房にあたらないように配管する必要があります。

 

現状では床下に潜っても断熱材が入っていて確認できない状態だったので、赤外線温度計を使って床温度を測ったのですが、床暖パネルが不揃いで正確な位置が出ません。

 

そこで登場したのが赤外線カメラ。床を投影すると、床暖配管の位置がオレンジ色に浮かび上がってきました。

 

工事は試行錯誤ですが、四苦八苦しながら答えを導くのは楽しい作業です。

 

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↑赤外線カメラで床暖房の位置を確認

仕事の受注はあるのに工事が進まない

昨年は施工業者が大忙しで、大工、外壁、電気、設備、内装と、職人さんを確保するのに苦労しました。これは弊社だけではなく、ハウスメーカー、地域ビルダー、地場の工務店などでも、職人がいなくて工程通りに工事が進まないという話をよく耳にしました。

 

昨日弊社を訪ねてきた外壁工事の社長は、「ほんと職人の手が足りなくて取り合いです。最近は工事が進まず迷惑をかけてしまうので、仕事を断っています。信じられないかもしれませんが、業者同士で仕事の譲り合い」といいます。

 

内装業者の知人からは、「ハウスメーカーは2ケ月先まで予定がいっぱい。その先は7棟決まっているっているし…、リフォームもあるからこれ以上請けることは無理だね」と。

 

この忙しさは消費税値上げの駆け込み需要による住宅着工棟数の増加ということもありますが、それだけではありません。

 

原因のひとつは職人の高齢化。廃業する人が増え数年前と比べると、約3割は減っているそうです。さらに3Kのイメージや人口減少などで、若い人のなり手が少ないこともあげられます。

 

職人だけでなく、建材商社の担当者も人員削減で、オーバーワークになっている人が増えています。新商品の紹介や新しいカタログの入替え、勉強会のお誘いなど、10年前はよく訪問されていましたが、最近ではほとんど顔を出しません。

 

工事の詳細打合せも納材店まかせで、自社の商品や施工方法を聞いても知識が乏しい。営業担当は広範囲にエリアを割り当てられ、新規開拓を求められるので、取引している会社のフォローまで手がまわらないのが現状です。

 

ITやAIによりコミュニケーション不足になりがちな昨今ですが、家造りではたずさわる人たちとの気持を大切にしながら、未来予想図を提案していきたいと考えています。

 

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↑↓今年の春は リゾートをキーワードに、古民家再生と貸し別荘工事がスタートします

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家造りは日々進化、快適さを目指して…

「住宅の断熱性能と明るさ感に関する研究」という講演論文を読みました。これは首都大学東京都と旭化成建材の方々によるアンケート調査に基づいた印象評価実験です。

 

対象者の居住する窓の断熱性能レベルを、Ⅰシングルガラス・アルミまたは鋼製枠、Ⅱペアガラス・アルミサッシ枠、ⅢLOW-E断熱ペアガラス・アルミ樹脂複合または樹脂枠の3つに区分し、住まいの温熱環境満足度や明るさの、行動・習慣・生活意識を調査しています。

 

実験概要は茨城県にある高断熱住宅で、対象者が空間構成の違いで明るさや印象にどのような影響を与えるかを把握するというものでした。

 

その方法は、南面で吹抜けを有する居間で「吹抜けを塞いだ状態」、「2階の窓ブラインドを塞いだ状態」、「1階の窓を小さくした状態」、「通常の状態」の4パターンでの評価です。

 

実験時には、一階の掃き出し窓を建築基準法に準じた大きさでなおかつ規格サイズにしたり、吹抜けを塞ぐ素材は壁面と色味の差が少ないものを使用したりして、現実に即するようにし、できるだけ印象評価への影響が少ないよう配慮しています。

 

詳しい内容については省略しますが、実験住宅と居住住戸から断熱性能が高いほど吹抜け採用率が高く、区分Ⅲは区分Ⅰの2倍の採用率であること、区分Ⅲでは吹抜けがあっても上下階や部屋間の温度差が少なく、快適な環境を作り出すという結果が出ています。

 

また、昼間照明を付けない状態での明るさの満足度については、断熱性能が高い窓ほど高いという結果が出て、断熱性能と明るさには相関係あるという結論に至っています。

 

寒冷・信州では、吹抜けのある家は2階に熱が逃げて寒くなるからNGと言われ、北海道では少し前まで熱ロスを避けて居室の窓は小さくするのが一般的でした。

 

隙間風と結露で健康を害していた家は、住宅性能が向上し日々進化しています。来年もより快適で住まい手に寄り添う家造りを目指していきます。

 

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