地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

だから建築はオモシロイ!

40年近く前にある雑誌で、日比野勝彦(現東京藝術大学教授)さんが、渋谷のマンションを改装してアトリエを構えたという記事を見ました。当時彼は段ボールを使った作品が話題を呼び、新進気鋭のアーティストとして注目されていました。

 

アトリエはRC(鉄筋コンクリート)造で天井をすべて取り壊し、RCの柱と梁がむき出しになり、設備機器のダクトもそのまま表していました。構造躯体の姿は、工事中のようにも見えますが、何だか新鮮で斬新でした。

 

建築家・安藤忠雄さんが1979年に日本建築学会賞を受賞した住吉の長屋は、RC打ち放しで室内外とも何も仕上げを施していない小住宅で、その発想は多くの建築家にインパクトを与えました。日比野さんのアトリエにもそれに似た感覚でした。

 

今でこそRC仕上げの店舗や美術館などはふつうに見られますが、その頃は既成概念を打ち破るための挑戦だったのかもしれません。ただし、RC打ち放しは断熱性能に劣り健康の弊害が懸念されていますが…。

 

3月から古民家改修工事がはじまります。長屋門のある大きな屋敷で、母屋のほかに土蔵や蚕室などの建物もあり、民泊施設としてリニュアルしています。リビングには太い梁が組まれた吹抜けがあり、その空間には一瞬圧倒されますが、なかに入ると懐かしさと心地よさを感じます。

 

それなのに隣のダイニングキッチンは20年前にリフォームして、天井は平天井のクロス貼り、壁も漆喰からクロスに変っていました。今風の新建材で、この空間だけミスマッチ。

 

ずっと違和感を覚えていたのですが、ある時リビングの吹抜けを眺めているうちに「ここも天井を剥がして梁を見せたらいんじゃないかな」と、思い付きました。頭の中のモヤモヤが晴れた瞬間でした。

 

ダイニングキッチンでは、キッチンを新規造作することになり、それにともなって位置も移動することになっていました。でもリフォームしたときの床暖房が問題でした。配置が変るため給排水配管のやり直し、そのためには床暖房にあたらないように配管する必要があります。

 

現状では床下に潜っても断熱材が入っていて確認できない状態だったので、赤外線温度計を使って床温度を測ったのですが、床暖パネルが不揃いで正確な位置が出ません。

 

そこで登場したのが赤外線カメラ。床を投影すると、床暖配管の位置がオレンジ色に浮かび上がってきました。

 

工事は試行錯誤ですが、四苦八苦しながら答えを導くのは楽しい作業です。

 

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↑赤外線カメラで床暖房の位置を確認

仕事の受注はあるのに工事が進まない

昨年は施工業者が大忙しで、大工、外壁、電気、設備、内装と、職人さんを確保するのに苦労しました。これは弊社だけではなく、ハウスメーカー、地域ビルダー、地場の工務店などでも、職人がいなくて工程通りに工事が進まないという話をよく耳にしました。

 

昨日弊社を訪ねてきた外壁工事の社長は、「ほんと職人の手が足りなくて取り合いです。最近は工事が進まず迷惑をかけてしまうので、仕事を断っています。信じられないかもしれませんが、業者同士で仕事の譲り合い」といいます。

 

内装業者の知人からは、「ハウスメーカーは2ケ月先まで予定がいっぱい。その先は7棟決まっているっているし…、リフォームもあるからこれ以上請けることは無理だね」と。

 

この忙しさは消費税値上げの駆け込み需要による住宅着工棟数の増加ということもありますが、それだけではありません。

 

原因のひとつは職人の高齢化。廃業する人が増え数年前と比べると、約3割は減っているそうです。さらに3Kのイメージや人口減少などで、若い人のなり手が少ないこともあげられます。

 

職人だけでなく、建材商社の担当者も人員削減で、オーバーワークになっている人が増えています。新商品の紹介や新しいカタログの入替え、勉強会のお誘いなど、10年前はよく訪問されていましたが、最近ではほとんど顔を出しません。

 

工事の詳細打合せも納材店まかせで、自社の商品や施工方法を聞いても知識が乏しい。営業担当は広範囲にエリアを割り当てられ、新規開拓を求められるので、取引している会社のフォローまで手がまわらないのが現状です。

 

ITやAIによりコミュニケーション不足になりがちな昨今ですが、家造りではたずさわる人たちとの気持を大切にしながら、未来予想図を提案していきたいと考えています。

 

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↑↓今年の春は リゾートをキーワードに、古民家再生と貸し別荘工事がスタートします

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家造りは日々進化、快適さを目指して…

「住宅の断熱性能と明るさ感に関する研究」という講演論文を読みました。これは首都大学東京都と旭化成建材の方々によるアンケート調査に基づいた印象評価実験です。

 

対象者の居住する窓の断熱性能レベルを、Ⅰシングルガラス・アルミまたは鋼製枠、Ⅱペアガラス・アルミサッシ枠、ⅢLOW-E断熱ペアガラス・アルミ樹脂複合または樹脂枠の3つに区分し、住まいの温熱環境満足度や明るさの、行動・習慣・生活意識を調査しています。

 

実験概要は茨城県にある高断熱住宅で、対象者が空間構成の違いで明るさや印象にどのような影響を与えるかを把握するというものでした。

 

その方法は、南面で吹抜けを有する居間で「吹抜けを塞いだ状態」、「2階の窓ブラインドを塞いだ状態」、「1階の窓を小さくした状態」、「通常の状態」の4パターンでの評価です。

 

実験時には、一階の掃き出し窓を建築基準法に準じた大きさでなおかつ規格サイズにしたり、吹抜けを塞ぐ素材は壁面と色味の差が少ないものを使用したりして、現実に即するようにし、できるだけ印象評価への影響が少ないよう配慮しています。

 

詳しい内容については省略しますが、実験住宅と居住住戸から断熱性能が高いほど吹抜け採用率が高く、区分Ⅲは区分Ⅰの2倍の採用率であること、区分Ⅲでは吹抜けがあっても上下階や部屋間の温度差が少なく、快適な環境を作り出すという結果が出ています。

 

また、昼間照明を付けない状態での明るさの満足度については、断熱性能が高い窓ほど高いという結果が出て、断熱性能と明るさには相関係あるという結論に至っています。

 

寒冷・信州では、吹抜けのある家は2階に熱が逃げて寒くなるからNGと言われ、北海道では少し前まで熱ロスを避けて居室の窓は小さくするのが一般的でした。

 

隙間風と結露で健康を害していた家は、住宅性能が向上し日々進化しています。来年もより快適で住まい手に寄り添う家造りを目指していきます。

 

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人生の節目で考えること

私事ですが今月26日で還暦を迎えました。といっても実感はなく、プロ野球の選手が2000本安打や200勝を達成したとき、「単なる通過点なので…」なんて言うのと同じで、その後も淡々と過ごしています。

 

そういえば30歳になるとき3歳年上の先輩が、「ボクは30歳の前日に銀座の東京温泉で垢すりをして30年分の垢を落してもらったよ」という話を思い出しました。

 

私も考えていたのですが、徹夜仕事でかないませんでした。数年後、友人との飲み会の後に酔い覚ましに体験しました。

 

お風呂に浸かっていると、ごっついオジサンに手招きされてベッドに寝かされました。態勢はうつ伏せ。まずは生温かいお湯を全身にかけられ、気持ちよくなったところで、ごわごわした皮のようなもので、体を磨かれました。

 

ゴシゴシ擦っていますが、痛いという感覚はありません。お湯で流しながら擦るため垢はボロボロでる感じではありませんでしたが、その爽快感は今でも覚えています。

 

今回60歳の前日に何をしようか考えていたのですが、その日は日曜日で東京に住む娘家族と中古住宅を見に行く予定になっていました。

 

東京はとにかく土地が高く、23区内は坪100万円以上があたり前です。その周辺の神奈川、千葉、埼玉も急騰しているところが多く、新築は若いファミリーには手が出せません。

 

そこで見に行ったのが千葉県郊外にある中古物件。約37坪の敷地に築11年30坪の建物。

価格は2,950万円と相場よりは低価格。その訳は土地が旗竿の敷地のためで、三方を建物に囲まれています。都会ではこんな条件の建物が多く見受けられます。

 

 

三週間前に東京・日野市にある「そらどまの家」の構造見学会があり、そこも旗竿の土地でした。隣との壁が接近して、窓の位置も取りづらく採光や換気するのに工夫が必要でした。

 

建物のオーナーは、採光システムを販売しているメーカーの社員。特殊鏡面アルミ材ダクトを使って、室内に太陽光を取込むこのシステムは、人工的な照明とは異なり健康的な自然光を感じられるのが魅力です。

 

仕事柄、「このシステムを自分の家でぜひ導入したい」と思っていたそうで、旗竿というハンデのある敷地を克服し、おまけに土地価格を相場の2/3に押えられたそうです。

 

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↑トップライトから工事中の1階に降り注ぐ自然光

タイニーハウスで暮らすという選択

東京で過ごしていた28年前、中央線沿線の住宅地に建つカメラマンの実家を訪ねたことがあります。彼はブラジル人女性と結婚して、アマゾンの僻地に暮らしていました。

 

仕事を依頼するときは、数キロ離れた家の住人に電話して呼び出してもらっていました。連絡がつくまでに一週間かかることもざらでした。

 

「電話がないところで仕事するのは大変じゃないですか?」。そんな質問をすると、「どうしても仕事の依頼をしたいとなれば、コンタクトをとろうとする人が一生懸命になるからどうにかしてくるもんだよ」。

 

バブル時代、仕事にあくせくしていた私には、その言葉が新鮮でした。ゆるい時間の流れのなかでのんびり過ごす生活。スマホを片時も離さない現代人なら、一日でも連絡が取れなければ不安を感じてしまいますし、すぐに連絡しないと脅迫観念に襲われます。

 

閑静な住宅街にあったカメラマンの仕事場は、物置を改造した一坪ほどの空間でした。写真を現像する暗室も兼ね、現像液のアンモニアのにおいがぷーんと鼻につきます。ピンで止められた紙焼きの作品。そこには彼の世界があり、こんな小さな空間で仕事ができる彼を羨ましく思いました。

 

欧米ではタイニーハウス、小屋のような小さな家が注目されています。タイニー(tiny)とは、ちっぽけな、ちっちゃなという意味。室内には、キッチン、トイレ、シャワーなど生活に最小限必要な設備を備えています。

 

アメリカでは、床面積200㎡を越える平屋から、その1/10のタイニーハウスに住みかえ、大自然の中で家族との生活を大切にする。そんなスタイルを実践する人たちが増えてきているそうです。

 

弊社では白馬村の別荘地に、小屋を改装したタイニーハウスを建築中です。施主は東京在住でリタイアしたご夫婦。外観は古びていて住めそうになかったですが、内部は意外にも小奇麗で、奥様はその小屋をとても気に入りました。

 

改装は「フレンチカントーリーのキッチンに」、「洗面の水栓は真鍮のレトロなひねるタイプ」、「シャビーな雰囲気を出したい」…など、奥様の思いがいっぱいに詰まっています。

 

それにつられて、「シャワーの位置は変えたほうがいいですよ」、「フェイクのドアはここに取付けましょう」など、大工さんもノリノリで仕事を楽しんでいます。

 

小さいからこそ、プライベート空間がより充実する。タイニーハウスは、自由で豊かな人生を送るひとつの選択肢かもしれません。

 

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白馬村の別荘地で改装中のタイニーハウス

 

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↑フレンチカントリー風キッチン。天板は自然石で、吊戸と換気扇をセット購入

 

この秋は建築ラッシュ!?

弊社のスタッフはこれまで3人でしたが、9月から現場管理を担当するMさんが入社しました。彼は元大工さんで、木造在来工法のプレカット工場、建材屋、地場の工務店の現場代理人などを経験し、まだ1ヶ月なのに弊社に欠かせない存在になっています。

 

私が一緒に仕事をしたいなと思う人は「建築が大好きな人」。意外かもしれませんが、この業界何となく入って来てしまう方も結構います。

 

もちろん日々の生活や家族のためにお金も必要ですが、家造りを施主さんや職人さんなどすべての人たちと「楽しみながらカタチにしていけたらいいな」と、思っています。だから、探究心があって仕事に熱中している人を見ると、つい誘ってしまいます。

 

Mさんもそんなひとりです。

 

先日、札幌の設計事務所の依頼で、住宅の柱を固定する柱脚金物を設置することになりました。設計事務所の図面にはその詳細図がありましたが、実際そのようなものはなく、既製品も探してみましたがどうもしっくりしません。

 

そこで設計事務所から提案された図面をもとに、安曇野市堀金にある金属加工場で製作依頼することにしました。以前、金属板の曲げ加工を頼んだことはありましたが、建築部材としてお願いするのははじめて。

 

熟練の職人さんに恐る恐る図面を見せると、ニコニコしながら工場をまわり、「この厚みのステンレス板は熱の温度を上げながら切断して…」、「焼き付け接合すると洗浄するのに時間がかかるんだよ」など丁寧に説明してくれました。

 

プライドを持って仕事をする町工場の職人さんの姿を見て、つくづくモノづくりはいいなと、感じます。

 

これまで少数精鋭、ワンストップで対応しましたが、今年の秋は50坪を超える別荘から、約100坪の集合住宅、160坪の木造ビルなど大型物件ばかりで、私たちのような小さな会社ではてんてこ舞いでした。

 

そこにMさんや新たな協力業者さんが加わり、少しホッとしています。

 

現在進行中の物件は、新築7件、リフォーム2件、リノベーション1件。この先、古民家再生もあり、まだまだ私たちの奮闘は続きます。

 

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↑ステンレス製のオリジナル柱脚金物

 

 

リゾート気分を味わうウッディな集合住宅

家造りをしていると、ときにはチャレンジャーになることがあります。それはコストの面だったり、建物の施工方法だったり……、いつもとは一味違ったものを創ろうとするとき。

 

弊社で建築している住宅なら、この規模のこの仕上げなら、だいたいこのくらいの金額になるということが経験上わかります。

 

でもが「もう少し安くならない?!」とか、「こういう雰囲気にして欲しい」など、予算度外視で無理難題を迫られてくることがあります。

 

そんなとき丁重にお断りすることにしていますが、「もしかしたらこんな素材を使用したらとか、こんな施工方法に変えたら何とかなるのでは」、と思うことがあります。

 

それは難しい課題に直面したとき難問を解くような感覚で大変ですが、解けたときのことをイメージすると、少しだけ快感だったりします。

 

今月着工した大町市にある集合住宅は、そんな建物のひとつです。

 

限られた予算の中で、木をできるだけ見せた「コテージ風のアパートにしたいとい」、というオーナーからの希望に四苦八苦しました。最近のアパートは、お洒落な外観が多いですが、室内は既製の建材を使っているので、確かにあまり代わり映えがしません。

 

ビジネスホテルに泊まっているような雰囲気で、少し冷たい感じ。

 

そこで大工のTさんと図面をみながら、どうしたらコスト押えて試行錯誤しながら考えました。たとえば柱や梁などの構造躯体の一部を表わしに。1階の天井は2階のパインの床材をそのまま見せたり、屋根の破風板に使用する杉材をウッドデッキ材に使ったり…。

 

建て方のときに、野地板を羽目板にして天井仕上げにする、その上に断熱材を入れるなど、ふだんはやらない施工にトライしています。

 

大町駅から徒歩5分、ショッピングセンター「フレスポ大町」の西に建設中ですので、近所にお越しの際は、ぜひ覗いてみてください。

  

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 ↑基礎工事中の集合住宅は今週28日に配筋検査が完了して、9月下旬に上棟予定