地球に寄りそうサスティナブル住宅

スクラップ&ビルドをくり返す現代住宅はもう卒業。バレナは次世代に引き継ぐ本物の家造りを提案します。

ディテールにこだわる

「雰囲気がよくて感じのいい建物」、「外観のデザインがちょっとダサいかな」……など、見た目で家を判断することがあります。

 

それはちょっとした違いで決まります。たとえば、間取りを優先して外観の窓位置がバラバラになったり、壁タイルの割付が片側に寄ってしまってバランスが悪くなったり、言わないと気づかないこともありますが、気になり出したらその部分ばかりに目がいってしまいます。

 

造り手としては、建具や窓枠の水平ラインを合わせたり、余分な線を減らすために窓枠をクロス巻込みにするなど、いかに室内空間をシンプルに見せるかを考えます。

 

私は建築特集をした雑誌やユニークな住宅を拝見するTV番組をよく観ます。それは自分が今まで使ったことのなかった素材や、考えたことのなかった空間の造り方など、家造りに活かせる物がないか、常にアンテナを張って探しているからです。

 

どこかで試してみたいと思うものがあったら、写真で画像にしたり、映像を録画したりして残します。それは街歩きをしているときでも同じ。

 

宿場町の通りで美しい窓格子を見つけたら、写真を撮りその格子の幅やピッチを数えます。

 

庭を囲む朽ち果てた木の塀。丸太を切りっぱなしにして並べただけなのに、自然で周囲と馴染んでいる。その施工はどうなっているのか、どうやって止めているのか? 正面、裏面、側面と細かく観察します。

 

裏通りに流れる小さな水路。人工的に石を配しているのに街並みにマッチしている。

 

そんな細かいティテール(詳細)観ていると、つい時間を忘れていまいます。いつかどこかで試してみたい。そのためにディテールを集めた抽斗を造っています。

 

何かいいなと感じるちょっとしたこだわりのディテール。

 

ふとしたところにそんな発見があるから、街歩きはやめられません。

 

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↑高原にあるイングリッシュガーデンの木の塀

 

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郡上八幡の裏道。石積みの水路がユニーク

 

 

 

 

2045シンギュラリティ

今から36年前、ある出版社の編集長が会社を退職して、新しいビジネスをはじめました。それは大企業のシステムエンジニアを引き抜き、パソコン検索して必要な情報を入手するソフトウエア会社で、今でいうベンチャー企業を目指していました。

 

社名にはHAL(ハル)という頭文字。この文字はアルファベッドで、IBMを超える=上をいくという意味が込められています。

 

大学を卒業した私は、その会社でレストランやカフェの情報収集とタウン誌の編集にたずさわりました。まだインターネットが普及していない時代。タウン情報誌などほとんどない時代で、一軒一軒お店をまわりました。

 

そのデータはコンピュータに入力して、東京のターミナルビルの一室で、情報を提供していました。

 

たとえば、カップルが訪ねてきたとき「この近くに夜景が見えるお洒落なレストランがありませんか?」とか、女子高生が「ソフトクリームがおいしいお店を教えてください」などの要望にたいして、コンピュータでキーワード検索すると、希望の店を見つけられるようになっていました。

 

今ではインターネットで検索すれば、簡単に探すことができますが、当時は画期的でした。Windows95が登場する10年以上も前の話しで、ワープロが200万円もして社内ローンで購入したのを覚えています。

 

それから目まぐるしく時代は変り、通信手段は固定電話から、ポケベル、TV電話、携帯電話、スマートフォンと変化し、かつて原稿や図面などを急ぎで送る時は、FAXやバイク便を使っていましたが、今ではメールで簡単にやりとりができるようになりました。

 

現在最も注目されているのは、AI(人工知能)。基本データをハイスピードで取込み、すごい勢いで進化しています。囲碁や将棋界ではトップ棋士が敗北したというニュースは衝撃的でしたが、最近ではそれほど驚かなくなりました。

 

先日IT関係の仕事をしているお客様から、将来はAIに取って代る職業が多くなると聞きかされました。たとえばデータを蓄積して判断する会計事務所や弁護士事務所。これはAIが特意とするところで、人間の仕事として残るのは痴情のもつれなどによる離婚問題くらいだそうです。

 

車の自動運転は2020年を目指し、セキュリティシステムでは街中の不審者を見つけ犯罪を未然に防ぐ研究も進んでいます。

 

建築業界でも外壁工事は、ロボットによって行われるようになる日はそう遠くないといわれます。私たち人間がAIにできない仕事はどこにあるか不安になります。

 

30年前、今日のような時代になるとは想像がつきませんでした。でもこれからは、5年先、10年先が想像できません。AIの知性が全人類の知性を超える時点=シンギュラリティは、2045年といわれています。

 

今年還暦をむかえる私にとって、この世界を見れるのか? 見みてみたいような、見たくないような……、そんな気持です。

 

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↑最近、アメリカ、オーストラリア、中国などのお客様のために、コミュニケーションツールとして購入した音声翻訳機「イリー」。旅行用の簡単な会話程度ですが、AIの発達で翻訳能力が格段にあがってきているとか

 

壊す家、残す家

7年前、松本市里山辺にある民家を二棟改修工事しました。その建物は隣どうしで、一棟は築40数年、もう一棟は築120年を越える古民家でした。

 

建築の仕事をはじめた頃、改築工事の打合をすると、「建物一部屋だけ残してもらえませんか?」という依頼がありました。当時、私は「せっかく建替えるのだから中途半端に残すより新しくしたほうが、きれいで使い勝手もいいのに」と思っていました。

 

それが里山辺の改修工事で、考え方が変りました。

 

築40年の建物は、大屋根の和風住宅。キッチン、風呂などの水廻りは古く、断熱材はほとんど入っていない状態。しかも基礎コンクリートは無筋、筋かいもなく今の建築基準法の耐震性能を満たしていません。

 

工事は骨組みだけを残して、基礎補強、筋かい施工、床、壁、天井に断熱材を充填しました。

 

建築中は離れに住んでいた、施主様と密に打合せができました。建物を取り壊していると、「この廃材はオヤジが勤めていた工場から、リヤカーに積んで一緒に運んできたものだ」と、ふっと思い出して懐かしい表情になりました。

 

育った家には思い出がいっぱい詰まっている。前の家にその痕跡を少しでも残せたらという気持があります。

 

築120年の古民家では、建物を見て直ぐ「これは残さなければいけない」と感じました。真夏でも涼しい土間、年期のはいった太い柱や梁…。懐かしさと安心感。

 

古民家は戦後の住宅とは異なり、建物の骨格となる構造躯体がごつくて頑丈です。戦中時、近くに焼夷弾が落ちて建物は揺れましたが、ほとんど影響はなかったそうです。そういえば、改修工事中に中部地震が発生した時も、その場にいた大工さんは大きな地震があったと気がつきませんでした。

 

古民家には住んでいた人たちの思いが沁み込み、長い歴史があります。

 

先日、合掌造りで知られる世界遺産、「越中五箇山・相倉合掌造り集落」を訪ねてきました。車で東海北陸自動車道五箇山ICから約20分。山深い道を走ると、こんなところに集落があるのか不安になります。途中、急勾配の坂道を上ると緑の中に家屋が点在する相倉集落が見えてきます。

 

この集落は閉鎖的な環境のなかで特殊な生活様式が生まれたそうです。合掌造の建物は屋根勾配60度、正三角形の切妻。釘や鎹を使わず、丸太を荒縄やネソという植物で結わえた特殊な建築工法です。

 

里山の自然に調和していて美しい。日本文化として後世に残していかなければならない。

 

この集落には23棟の集落が現存していますが、そこでは田畑を耕し、食事処や民宿などで生活を営んでいる。そんなところに魅力を感じます。

 

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世界遺産・相倉合掌造り集落

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↑屋根は60度の急勾配。外部建具の窓は障子貼り

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↑小屋組は丸太を荒縄で結わえた特殊工法

 

 

 

FujisawaSSTは未来住宅のカタチ?

神奈川県藤沢市あるFujisawaサスティナブル・スマート・タウン(FujisawaSST)を見学してきました。

 

ここはパナソニックの工場跡地を利用して開発した「街づくりプロジェクト」。東京ドーム4個分、約6万坪の敷地に1,000世帯ほど,約3,000人が生活する街で、住宅建設は現在も進行中です。

 

見学前はゼロエネ住宅の分譲地で、太陽光発電システムと蓄電池を装備している家というようなイメージしか持っていませんでしたが、街のなかには商業施設や健康・福祉・教育などの公益施設、公園や街区も計画されています。

 

商業施設は「湘南T-SITE」。中央通路にツタヤ書店が出店し、両サイドに書籍に関連する業態の雑貨屋、レスラン、ブティック…などが並ぶ。120mの通路は通称「マガジンストリート」呼ばれているそうです。

 

街には医療、看護、介護、薬局などが連携する「シームレスサービス」を提供。健康増進のためのイベントを開催したり、保育所、学習塾、学童保育などの「生きる力」のベースとなる支援サービスもサポートしています。

 

新たな試みとしては、電気自動車(EV)や電動自転車のシェアリングサービス。自宅のテレビやスマートフォンから、空き状況確認や予約ができ、効率的に利用できます。また非常時には電力の供給手段として、集会場にあるEVとV2Hコンセントを開放。貴重なエネルギー源として役立ちます。

 

住宅はパナソニック三井不動産が分譲。太陽光発電システムと蓄電池のほかに、50インチTVが標準仕様。TVはシェアリングサービスやイベント情報収集などのツールとしても利用でき、自宅にいながらにして子供が公園で遊んでいる様子を防犯カメラで見ることもできます。

 

パナソニックをはじめとするパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトは、住民や近隣住民が主役になって参加できるコミュニティ活動をスタートしています。住民との親睦を深めるウェルカムパーティ、防災イベント、暮らしのアイデアを出し合うタウンミーティング…。

 

FujisawaSSTは自治組織とタウンマネージメント会社による街づくりです。昔はご近所さんや隣組でのつながりは、会社として運営しないと成り立たないことに少し寂しさを覚えます。

 

また欧米の街並みのように、歩いていてわくわく感がない物足りなさもあります。

 

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↑湘南T-SITEはライフスタイルの提案がいっぱい

 

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↑EVでカーシェアリング

 

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三井不動産の分譲住宅。売値は6,000万円くらいとか

日本の住宅のゆくえ

ある取引業者さんから、賃貸アパートの空き家が増えていることを聞きました。古くなると入居者が減り、ゴーストタウンのようになると、借り手が見つかりません。家主さんは仕方なく家賃を値下げし、管理会社は家賃保証で四苦八苦しています。

 

最近都会のほうで家賃保証をできなくなって倒産した、という管理会社がありました。松本や安曇野でもアパート経営が厳しくなると、「建て替えましょう」とローン返済がまだなのに、残金をチャラにするからと、新築を持ちかける事業者がいるそうです。

 

最初は「入居者がいなくなって、だまされた」と言っていた家主さんも、いつの間にか契約書にサインをしていたなんていうことも聞きます。ローン期間が延長になり、より負担額が増えることを気がついていないかのように。

 

先週、東京で知合いの設計士の方と話をしていると、都内でも戸建ての空き家が多くなってきているという話しがでました。子供たちが家を出た後、夫婦ふたり暮らしになり、どちらかが亡くなると、最期には介護施設にはいる。そこで、住んでいた家は空き家に。

 

都下にある私の実家は50年前、団地の建設ラッシュで急激に人口が増えました。その時、家を建てて都内から引っ越してきた私は小学4年生になり、転校生でしたが、同じ転校生がクラスの1/3もいました。転校生という特別扱いをほとんどされなかったのを覚えています。

 

その後、10年間で小学校が4校増え、中学校は1学年9クラスありました。公園や校庭、河川敷では子供たちの声が絶えませんでした。

 

それが50年後の今日、通っていた小学校は廃校になり、近所の団地は高齢者ばかり。建て替えの話がでていますが、その説明会の出席者は80歳代ばかりで、3年後、5年後の未来よりも、現状のままでいいという話になるそうです。

 

その一方で、近くに大手ディベロッパーが造成した建売住宅には、若い世代の家族ばかりが集まり、ひとつのコミュニティをつくっています。

 

同じ地域のなかに、高齢者とヤングファミリーのエリアがはっきり棲み分けされている。そのアンバランスに不自然さを感じます。50年後には、この建売住宅も空き家になってしまうのでしょうか?

 

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↑春が待ちどうしい! 早く来い

弾丸シェムリアップ

 

3泊5日という弾丸スケジュールで、世界遺産アンコールワットのあるカンボジアシェムリアップに行って来ました。

 

カンボジアは1970年代ポルポト政権下で、多くの人たちが犠牲になりました。思想改造の名の下に、医師、教師、公務員、芸術家、資本家などの良識者が、強制収容所へ送られて、虐殺され、その死者は100万~200万ともいわれています。

 

当時、週刊誌のグラビアで、アンコールワットが銃撃されているようすを見ました。弾痕が痛々しくて、悲しくて、何時の日かこの地が平和になったら、ぜひ訪ねてみたいと思っていました。

 

今回、妻と一緒でしたが、ふたりだけの海外は27年ぶり。お互いに歳をとり、亜熱帯気候のなかでまる一日、遺跡群を見学するのはハードですが、その分ホテルのベッドでぐっすり眠れる心地よさは、久しぶりでした。

 

アンコール遺跡群については、ガイドブックを読めばわかるので、シェムリアップの住宅事情について書きます。住宅は高床式で、1階の柱が2階の建物の荷重をすべて支えています。

 

日本の木造住宅の場合、1階に筋かいなどの耐力壁をとらないと、構造計算上クリアしませんが、ここでは一切ありません。現地の人に聞くと、地震がないので考えていないとか。

 

高床式は風通しがよく高温多湿の地域に適しているといわれます。それ以外に、雨季に起こる川の氾濫を防ぐ、蛇や獣の外敵から身を守ることなども、その理由だそうです。

 

昔は椰子の葉で壁を覆っていましたが今は板壁。1階の柱はコンクリートの支柱が多くなっています。日本でいえばウッドデッキなどで使う沓石が、そのまま伸びて柱になったようなもので、郊外に出るとそれを売っている店があります。

 

住宅は家族で造る。私たちのような専門業者には依頼せずに、木材や建材も自分たちで調達。建築費は10,000ドルから20,000ドルくらい。一般的に家族が多く、例えば、遺跡を案内してくれたガイドさんの家では、7人兄弟に両親を含めて15人で住んでいました。

 

1階は米の貯蔵や自転車を収納する物置き場で、子供、ニワトリやイヌの遊び場にもなっています。料理は外のかまどで作り、肉は家畜のブタやニワトリ。

 

かつて日本にもあった、素朴な日常生活が見られます。

 

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↑コンクリートの柱で建てた高床式住宅

 

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↑1階は子供たちの遊び場。ハンモックでシエスタ

 

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↑椰子造られた高床式住居

 

 

既成概念を打ち砕け

この度、年末にホームページをリニーュアルしました。

 

弊社の家造りをダイレクトに伝えるために、その冒頭で、住まい手が心地よく暮らせる「くうきを創る」を提案しています。

 

それは日々の生活の中で、「家族とのほんわか触れ合うリビング」だったり、「真冬どこにいても温かい空間」だったり、ダニやカビの原因となる結露のない「呼吸する家の提案」だったり…、空気感を大切にしたい、という考えからです。

 

住宅展示場めぐりをしていると、最新の住宅事情がわかり,とても参考になります。でも、何件もまわっていると、断熱気密性能はこの家のほうが高いとか、設備はこちらのほうが便利だとか、較べる基準がそういうところに目がいってしまって、「これがスタンダード住宅」と、つい勘違いしてしまします。

 

弊社では、ほんとうに自分が住みたい家は何なのかを、住まい手の思いを聞きながら一緒に考えていきます。

 

話しは変りますが、20代のころよく外国旅行に出かけました。時代はバブル景気のまっただなか。忙しい日々でしたが、あたりまえのようなレールを敷かれた毎日に、疑問を感じて飛び出したのです。日本という国が華やかなで楽しかったけれど、窮屈でした。

 

それが異国に行くと、列車は平気で遅れるし、親切心で網棚に荷物を乗せてくれたと思ったらお金を要求され、社会主義の国ではホテルの部屋がガラガラなのに満室だと言われました。日本の常識が通用しない世界。

 

アラブの世界ではカフェに行くと、男性だらけで現地女性は皆無。街を歩くと女性はアバヤという民族衣装を身にまとい、忍者のように顔をまで覆っている人たちも。男性社会だから保守的…?! それなのにディスコでは、派手な格好で陽気に踊っていたりする。想像と違う。

 

最初は苛立ちもどかしさが多かったのですが、その国の空気に身をおくと、しだいに力が抜けて気持が軽くなりました。かしこまって肩肘を張らない。

 

来年はそんなニュートラルな感覚で過ごしたいものです。

 

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↑今年最期の引渡し物件

 

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↑今年12月に上棟した白馬の別荘地